讀下:8-1552

文書構造

讀み下し文

文書本體

書出

敢えて尉に告ぐ。

用件

書到るの時を以て盡(ことごと)く求盜[i]・戍卒を將い[ii]、衣器[iii]を操りて[iv]廷に詣(いた)れ。

書止

唯れ、遺(のこ)すなかれ[v]

[i] 求盜、官職名担当。(以下は石原┘ジュメ「〇一丁謂類文書から〇一壬詔類文書」(2月18日付)の注案。)

士吏、校長・獄史などに從い、盗賊の捕縛などの治安維持活動に從事する者。黔首から徴発されたと考えられる。

小男子說。今尉徵說以爲求盜A員吏勿。B(里耶秦簡⑧2027)

[ii] 以書到時、「以某時」は時点を表し、「書到る」は文書の到着を指し、文書到着後すぐに、つまり卽時の意。本文書は、尉に緊急出動を命じたものと解される。

[iii] 衣器、備品・物の汎稱。嶽麓秦簡『為獄等状』では、簡059と060に見える「衣器」は、簡053と054の「分器」や簡056の「有器」に對應しており、盜掘品を指すことが明らかであり、「衣」と「器」とがそれぞれ衣類と器物を意味するとは考え難い。本簡では、尉と所属の求盗や戍卒に対する出動命令が記されており、同様に、衣類とその他の器物に関する個別的指定よりも、装備品全般に関わる指示と捉えた方が自然であろう。從來知られていた「衣器」の用例を調べると、『法律答問》簡一七〇に

「夫有罪,妻先告,不收。」妻賸(媵)臣妾、衣器當收不當?不當收。

「夫、罪有るも、妻先に告げば、收せず。」(と律にあり。)妻の媵(つきそ)いし臣妾・衣器はまさに收すべきや不(いな)や。まさに收すべからず。

と、『封診式』簡〇八に

以某縣丞某書,封有鞫者某里士五(伍)甲家室、妻、子、臣妾、衣器、畜產。

某縣丞某書を以て、鞫有る者の某里士伍甲の家室・妻・子・臣妾・衣器・畜產を封せり。

『奏讞書』簡二一四-二一五に

有受孔衣器、錢財,弗詣吏,有罪。

孔より衣器・錢財を受くる有るに、(これを)吏に詣さざるは、罪有らん。

というように、同じく汎稱と理解すべきであろう。

[iv] 操、たずさえる意、ここでは、緊急出動に必要な武器等の装備品の携帯を指す。9-0982には、

遣佐壬操副詣廷。

というように、佐の壬が派遣されて、副本を携えて県廷に出頭する様子が窺える。「操」字については、さらに8-0173の注?を参照。

[v] 遺、うしなう意から転じて、遺漏。本簡では、「毋遺」が「盡」に対応して、求盜や戍卒を全員出動させる意に解されるが、装備品の「衣器」を指す可能性も排除できない。『説文解字』辵部には、

遺,亡也。

遺、亡(うしな)う也。

といい、『呂氏春秋』貴公の

荆人有遺弓者。

荆人、弓を遺(うしな)う者有り。

に対して、高誘は

遺,失也。

遺、失う也。

と注釈する。『韓非子』有度には、

刑過不避大臣,賞善不遺匹夫。

過を刑するに、大臣を避けず、善を賞するに、匹夫を遺さず。

という用例が見える。