讀下:8-1539

文書構造

讀み下し文

添付書類

【不更以下徭計二牒】

文書本體

書出

三十五年(212)九月丁亥朔乙卯(29)、貳春鄕守の辨(べん)、敢えて之れを言う。

用件

不更[i]以下の徭計[ii]二牒を上す。

書止

敢えて之れを言う。

附記

集配記録

(某月)某日某時,某人以て來る。/某發(ひら)く。

作成記録

【某手す。】

[i] 不更、秦漢の爵名の一つ、二十等の中、下から數えて第四級。『漢書』百官公卿表や『漢舊儀』等にも見えており、「士」の最高爵位とされる。『続漢書注』百官志所引の劉劭『爵制』には、

自一爵以上至不更四等,皆士也。大夫以上至五大夫五等,比大夫也。九等,依九命之義也。自左庶長以上至大庶長,九卿之義也。

一爵より以上、不更に至るの四等、皆な士なり。大夫より以上、五大夫に至るの五等、大夫に比する也。九等は、九命に依るの義なり。左庶長より以上、大庶長に至るは、九卿之義なり。

という。それを裏付けるかのごとく、簡牘史料にも、諸種の法律効果を「不更以下」に限定する表現が散見する。嶽麓秦簡(肆)の律令簡牘には

253     䌛(徭)律曰:發䌛(徭),自不更以下䌛(徭)戍。自一日以上盡券書,及署于牒。將陽倍(背)事者亦署之。(後略)

䌛(徭)律に曰わく、徭を發するに、不更より以下、䌛(徭)戍す。一日より以上は盡く券もて書し、及び牒に署(しる)す。將陽し事に背く者も亦た之れを署す。(後略)

といい、『二年律令』には、

364     不更以下子年廿(二十)歳,大夫以上至五大夫子及小爵不更以下至上造年廿(二十)二歳,卿以上子及小爵大夫以上年廿(二十)四歳,皆傅之。(後略)

不更以下の子は、年二十歳、大夫より以上五大夫に至るの子、及び小爵の不更より以下上造に至るは、年二十二歳、卿以上の子及び小爵の大夫以上は、年二十四歳にして、皆なこれを傅す。

という。

[ii] 徭計、計は增減や總數を年度單位で記した帳簿・會計(簡8-1477+8-1141注?を参照)、徭計は徭役に関する会計。鄕嗇夫が文書の発信者となっていることから、本簡の謂う徭計は、一般庶民を対象として徭役從事者の人数を記したものと推測される。簡8-0488の「戶曹計録」に「鄕戶計」とともに「徭計」が掲げられていることから、本簡の徭計も県廷の戶曹によって処理されたと考えられる。鄕嗇夫の徭役との関わり方は、嶽麓秦簡(肆)の律令簡牘に現存する次の徭律の規定から窺える。

244     䌛(徭)律曰:歲興䌛(徭)徒,人爲三尺券一,書其厚焉。節(卽)發䌛(徭),鄕嗇夫必身與典以券行之。田時先行富

245     有賢人,以閒時行貧者,皆月券書其行月及所爲日數,而署其都發及縣請。其當行而病及不存,

246     署于券,後有䌛(徭)而聶(攝)行之。節(卽)券䌛(徭),令典各操其里䌛(徭)徒券。來〔未?〕與券以畀䌛(徭)徒,勿徵贅,勿令費日。(後略)

徭律に曰わく、歲ごとに徭徒を興こすに、人ごとに三尺の券一を爲(つく)り、其の厚きを書す。卽(も)し徭を發せば、鄕嗇夫、必ず身(みずか)ら典と與(とも)に券を以て之れを行え。田時には、先に富みて賢有る人を行(や)り、閒時を以て貧者を行る。皆な月ごとに其の行うの月及び爲す所の日數を券書し、其の都の發せし及び縣の請いしを署(しる)せ。其の當に行るべきに病み及び存ぜずんば、券に署し、後に徭有らば、之れを攝行せしめよ。卽し券もて徭せば,典に令して各々其の里の徭徒が券を操らしめよ。未だ與(とも)に券して以て徭徒に畀えずんば、徵贅するなかれ、令して日を費さしむるなかれ。(後略)

『二年律令』には、

415     傳送爲□□□□及發䌛(徭)戍不以次,若擅興車牛,及䌛(徭)不當䌛(徭)使者,罰金各四两

416     都吏及令、丞時案不如律者論之,而歳上䌛(徭)員及行䌛(徭)數二千石官。

傳送して爲□□□□及び徭戍を發するに次を以せず、若しくは擅に車牛を興こし、及び當(まさ)に徭使すべからざる者を徭せしめば、罰金各々四两。都吏及び令・丞は、時に律が如くならざる者を案じて之れを論じ、歳ごとに徭せる員及び徭を行いし數を二千石官に上せ。

と、都吏・令・丞が徭役の実施を監視し、徭役從事者の人数を一年ごとに二千石官へ報告するよう規定されている徭律と比定される佚文が伝えられる。

[iii] 據文書格式,本簡背面左側應有收發記録(上段)和制作記録(下段),疑被刮削。