文書構造 |
讀み下し文 |
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添付書類 |
【當令者三牒】 |
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文書本體 |
書出 |
二十九年(218)四月甲子朔辛巳(18)、庫守の悍(かん)、敢えて之れを言う。 |
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本文 |
状況説明 |
御史令して曰わく、 |
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各々官徒の丁齡[i]なる【……】を第(つい)で[ii]、【……】勮(しげ)き[iii]者は甲と爲し、次ぎ[iv]は乙と爲し、次ぎは丙と爲し、各々その事の勮(げき)易(い)[v]を以て之れを次(つい)でよ[vi]。 |
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●令[vii]に曰わく、 |
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各々【……】を以て【……】上せ。 |
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用件 |
●今 |
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令に當たる者三牒を牒書し、第(つい)でを署して上す。 |
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書止 |
敢えて之れを言う。 |
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附記 |
集配記録 |
四月壬午(19)、水下二刻、佐の圂(こん)、以て來る。/槐(かい)半(ひら)く。 |
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作成記録 |
【某手す。】 |
[i] 丁齡、見《秦律十八種》簡061-062:
061 隸臣欲以人丁僯(齡)者二人贖,許之。其老當免老、小高五尺以下及隸妾欲以丁僯(齡)者一人贖,許之。贖
062 者皆以男子,以其贖爲隸臣。女子操敃(文)紅(功)及服者 ,不得贖。邊縣者,復數其縣。 倉
[ii] 第、初出
[iii] 訓読みは繁重の繁に從った。
[iv] 次、つぐ・すぐ下に位する意、ここでは、繁閑の程度が一段低いことを表す。『説文解字』欠部に、
次,不前不精也。
次、前ならず精ならざる也。
といい、徐鍇『説文解字繫傳』欠部には、
不前,是次於上也;不精,是其次也。
前ならず、是れ上に次ぐなり。精ならず、是れ其の次なり。
と、段玉裁『説文解字注』欠部には、
前當作歬。不歬不精皆居次之意也。
前は當(まさ)に歬に作るべし。歬ならず精ならずとは、皆な次に居るの意なり。
と注釋する。『儀禮』特牲饋食禮の鄭玄注では、同じ意味を
亞,次也。次猶貳也。
亞は、次ぎ也。次は、猶お貳のごとき也。
と表現する。傳世と出土の文獻には、段注の通り「次に居るの意」で解釋できる辭例として次のような用例が擧げられる。
『論語』季氏:
生而知之者,上也;學而知之者,次也;困而學之,又其次也;困而不學,民斯爲下矣。
生まれてこれを知るは、上(じょう)なり(=上位に居る也)。學びてこれを知るは、次(じ)なり(=次位に居る也)。困りてこれを學ぶは、又た其の次なり(その次位に居る也)。困るも學ばざるは、民、斯かるを下と爲す。
『漢書』食貨志下:
管氏之輕重,李悝之平糴,弘羊均輸,壽昌常平,亦有從徠。顧古爲之有數,吏良而令行,故民賴其利,萬國作乂。及孝武時,國用饒給,而民不益賦,其次也。至于王莽,制度失中,姦軌弄權,官民俱竭,亡次矣。
管氏の輕重、李悝の平糴、弘羊の均輸、壽昌の常平も亦た從(よ)りて徠(き)たる有り。顧(おも)うに、古え之れを爲すに數有り、吏良にして令行われ、故に民、其の利に賴り、萬國作乂たり。孝武時に及びて、國用、饒(ます)ます給するも、民、賦を益せざるは、その次(じ)なり(その次位に居るなり)。王莽に至りては、制度、中を失い、姦軌、權を弄び、官民俱に竭くるは、次(じ)なる亡(な)し(さらに次位に居るなし)。
『爲獄等狀四種』:
243(3) 【……】□臣信(?)請取得(?)【……】
244 皆致灋(法)焉。有(又)取卒畏耎(最)先去、先者次(?)十二人,完以爲城旦、鬼薪。有(又)取其次(?)十四人,耐以
244(2) 爲隸臣。(後略)
……□臣信、請うらく、得(=人名)……を取り……皆な法に致たせ。又た卒の畏耎にして最も先に去る(もの)・先んずる者に次ぐ(もの=先者の次位に居るもの)十二人を取り、完うして以て城旦・鬼薪と爲し、又たその次なる(もの)十四人を取り、耐して以て隸臣と爲せ。(後略)
『奏讞書』:
182 (前略)不孝者棄市。棄市之次,黥爲城旦舂。(後略)
不孝なる者は、市に棄(す)つ。棄市の次は、黥して城旦舂と爲す。
[v] 勮易、業務などについて、輕重・繁閑等の程度をいう。『史記·田叔列傳褚少孫論』には、
邑中人民俱出獵,任安常爲人分麋鹿雉兔,部署老小當壯劇易處,衆人皆喜。
邑中の人民、俱に出でて獵するに、任安、常に人が爲に麋鹿雉兔を分ち、老小・當壯を劇易處に部署し、衆人、皆な喜ぶ。
という用例が見える。傳世文獻では多く「勮」を「劇」に作る。『説文解字』刀部には、
勮,務也。
勮、務むる也。
といい、段玉裁は
務者,趣也,用力尤甚者。其據切,五部。音轉爲渠力切,字譌從刀作劇。
務は、趣く也、力を用うること尤も甚だしき者なり。其據の切(=ju4/きょ)、五部。音は轉じて渠力の切(=ji2/げき)と爲り、字は譌(あやま)り刀に從いて劇に作る。
と注する。「尤甚」という解釋は、『説文解字』刀部の新附字「劇」の訓詁に基づく。「劇」は、「甚だしい」から轉じて、繁雜の意。『荀子』非十二子の楊倞注には、
劇,繁多也。 >
劇は、繁多なり。
と訓じ、『商君書』算地には、
不觀時俗,不察國本,則其法立而民亂,事劇而功寡。
時俗を觀ず、國本を察せずんば、則ち其の法立ちて民亂れ、事劇(しげ)くして功寡(すく)なし。
という用例が見える。「易」は、簡易・簡略の意。『公羊傳』宣公六年に、
吾入子之大門,則無人焉;入子之閨,則無人焉;上子之堂,則無人焉;是子之易也。子爲晉國重卿而食魚飱,是子之儉也。
吾れ、子の大門に入り、則ち人なく、子の閨に入り、則ち人なく、子の堂に上り、則ち人なし。是れ子の易き也。子、晉國の重卿たるも魚飱を食す。是れ子の儉(つづま)やかなる也。
といい、何休の注は
易,猶省也。
易は、猶お省がごとき也。
と語釋する。
「勮」は人名では「劇」とも書かれ、「勮」と「劇」が通じる。段玉裁の注では、劇を俗字として退け、勮を本字とする。
[vi] 次、つぐ、転じてついでる・順序に從って並べる若しくは順序づける意。『玉篇』欠部には、
次,叙也。
次、叙(つい)づる也。
という。『呂氏春秋』季冬に
乃命太史,次諸侯之列,賦之犠牲。
乃ち太史に命じて、諸侯の列を次いで、之れに犠牲を賦せしむ。
といい、高誘は
次、列也。
次は、列(なら)ぶる也。
と注釈する。『二年律令』には、
318 未受田宅者,鄕部以其爲戶先後次次編之。久爲右,久等,以爵先後。有籍縣官田宅,上其廷,令輒以次行之。
未だ田宅を受けざる者は、鄕部、其の戶と爲るの先後の次を以て、之れを次いでて編せよ。久しきは右と爲し、久しきこと等しかば、爵を以て先後せよ。縣官に田宅を籍する有らば、其の廷に上し、令して輒(ただ)ちに次を以て之れを行え。
と、戶籍登録の順に順序づけを行って名籍を編集し、その順序に沿って田宅配給を行う規定が置かれている。
[vii] 令、命令の意(簡8-0652+8-0067注?參照)、ここでは、詔令もしくは法令を指すと推測される。