文書構造 |
讀み下し文 |
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文書本體 |
書出 |
【某年某月某日朔某日、遷陵某職の某人、敢えて之れを言う。】 |
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本文 |
状況説明 |
【……】 |
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書を遷陵に【……】、遷陵、論じて言え。 |
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用件 |
之れを問うに、 |
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書止 |
【敢えて之れを言う。】 |
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附記 |
集配記録 |
【(某月)某日某時,某人(某處に)行る。】 |
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作成記録 |
【某手す。】 |
[i] 痤、人名、「論」の被告と推定される。
[ii] 致、「至」と同源、「いたらしめる」・「いたす」の意。『説文解字』攵部には、
致,送詣也。
致、送りて詣らしむる也。
といい、段玉裁は
送詣者,送而必至其處也。引申爲召致之致。
送詣は、送りて必ずその處に至らしむる也。引申して召致の致と爲す。
と注釋する。「おくる」よりも「詣らしむ」に重點が置かれている。秦漢の簡牘法制史料では、物の支給や人・物の移動を指示する行爲および關連文書を「致」と稱する。例えば、『秦律十八種』簡牘011には、
011 乘馬服牛稟,過二月弗稟、弗致者,皆止,勿稟、致。稟大田而毋(無)恆籍者,以其致到日稟之,勿深致。 田律
乘馬・服牛が稟(ふちまい)、二月を過ぐるも、(これを)稟(さず)けず、(これを)致さざる者は、皆な止め、稟くること、致すことなかれ。大田より稟(う)くるに恆籍無き者は、其の致の到るの日を以てこれを稟く。致を深(こ)ゆることなかれ。 田律
という田律の規程が見えるが、「稟く」が穀物の支給行爲を指すのに對し、「致す」という動詞は、それを指示する法律行爲を表す。「その致」という名詞は、支給を指示する文書をいう。人の移動に關わる文書を表す「致」は、
035 宂募歸,辭曰日已備,致未來,不如辭,貲日四月居邊。(後略)
宂募歸らんとし、辭して、「日已に備わりたるも、致未だ來らず」と曰うに、辭の如くならずんば、日ごとに四月居邊を貲(はか)る。
というように、『秦律雜抄』簡035に見えており、時には、例えば
001 (前略)六月戊子,發弩九詣男子毋憂告:爲都尉屯,已受致書,
002 行,未到,去亡。(後略)
六月戊子、發弩の九、男子の毋憂を詣(いた)し、告ぐらく「都尉が爲に屯し、已に致書を受けたるに、行きて未だ到らずして、去亡す」と。
という『奏讞書』簡001-002の如く、「致書」とも稱せられる。本簡では、或る人の論斷を指示された遷陵縣が、痤という人が監御史によって臨沅に「致繫」されたと報告しているので、痤の身柄が監御史の指示により、遷陵縣から臨沅縣に送致され、臨沅縣で拘束されていると推測される。