文書構造 |
讀み下し文 |
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添付書類 |
? |
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文書本體 |
書出 |
【某年某月某日朔某日、某職某人、敢えて之れを言う。】 |
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本文 |
状況説明 |
【……】 |
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【……】廷詣【……】及び解牒[i]を上せ。 |
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用件 |
今 |
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書を以て言署獄[ii]【……。】 |
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書止 |
【敢えて之れを言う。】 |
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附記 |
集配記録 |
【……。】 |
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作成記録 |
【某手す。】 |
[i] 解、辨解・釋明の意。『玉篇』解部には、
解,釋也。
解、釈(と)く也。
という。『漢書』揚雄傳には、
或謿雄以玄尚白,而雄解之,號曰解謿。
或(ある)ひと、雄を謿(あざわら)うに玄尚白を以てすれば、雄、之れを解(と)き、號して解謿と曰う。
と、辨解するという意味の普通動詞として解が用いられる。文書行政では、多く誤解や避難を解く釋明の意で用いられる。例えば、1930年代の居延漢簡には、
卅井言えらく、謹んで二年十月以來の計最を拘校するに、未だ會日に會する能わず、解を言わんことを謁う。
と、下級機關から自ら釋明したいと申し出る事例や、1970年代の居延漢簡には、
官去府七十里、書一日一夜、當行百六十里、書積二日少半日乃到、解何。(後略)E.P.S4・T2:8A
官は府より去ること七十里、書は一日一夜、當に百六十里を行くべきに、書、積むこと二日少半日にして乃ち到る。解は何ぞ。
というように。上級機關が釋明を求める事例が見える。司法手續における被疑者や參考人の釋明も、次の『封診式』から判明するように、「解」と稱せられる。
02 訊獄。凡訊獄、必先盡聽其言而書之、各展其辭、雖智(知)其訑、勿庸輒詰。其辭已盡書而
03 毋(無)解、乃以詰者詰之。詰之有(又)盡聽書其解辭、有(又)視其它毋(無)解者以復詰之。(後略)
訊獄。凡そ訊獄、必ず先に盡く其の言を聽きて之を書し、各おの其の辭を展し、其の訑を知ると雖も、輒詰を庸いる勿れ。其の辭已に盡く書して解無くんば、乃ち詰者を以て之を詰せ。之を詰し、又た盡く聽きて其の解の辭を書し、又た其の它の解無き者を視れば、復を以て之を詰せ。…)」
「無解」とは、それ以上の釋明がないことを言い、「解辭」は、獄吏の詰問に對する釋明(「解」)を内容とする供述(「辭」)を表す。なお、傳世文獻には、言い譯・口實とでも翻譯できる用例があるが、それは、意味論的な差異というよりも、文脈の違いと捉えるべきであろう。例えば、『漢書』淮南衡山濟北王傳には、
上遣廷尉監與淮南中尉逮捕太子。至、淮南王聞、與太子謀召相・二千石、欲殺而發兵。召相、相至。内史以出爲解。
上、廷尉監を遣り、淮南中尉と與に太子を逮捕せんとす。至り、淮南王聞き、太子と與に謀りて相・二千石を召し、殺して兵を發せんと欲す。相を召すに、相至る。内史出づるを以て解と爲す。
とあり、顏師古注には
不應召而云已出也。解者、解説也、若今言分疏矣。
召に應ぜずして已に出づと云うなり。解なる者、解説なり、今の分疏と言うが若し。
という。
解牒、解は釋明、牒は簡札の義から轉じて、一枚の簡牘に纏められた記錄・文字資料(簡8-2003注?參照)、解牒は、後續文章「今書を以て言う」の「書」に對應し、釋明を一枚の簡牘に記した文書と推測される。後續文章に「獄」字がみえることから、取り調べにおける釋明を記した文書を指す可能性もある。
[ii] 言署獄、殘缺のため正確には分からない。「今、書を以て署を言うに、獄【……】」とも「今、書を以て言うに、署獄【……】」とも讀める可能性があるが、「署獄」が、「署某發」という附記とは異なり、主文の一部を構成する關係上、「署」は、「部署」を指す可能性が高いように思われる。