文書構造 |
讀み下し文 |
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文書本體 |
書出 |
三十五年(212)八月丁巳朔丙戌(30)、都鄕守【の蜀、敢えて之れを言う。】 |
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本文 |
状況説明 |
【……】 |
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【……】士伍の兔【を遣わして/に令して】、少内に詣り[i]、購を受けしめよ。 |
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用件 |
●今 |
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【……を】遣わし【……。】 |
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書止 |
【敢えて之れを言う。】 |
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附記 |
集配記録 |
九月丁亥(01)、日垂入、鄕守[ii]の蜀、以て來る。瘳(ちゅう)【發(ひら)く。】 |
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作成記録 |
【某手す。】 |
[i] 詣、いたる・いたす意、法律用語としては、自動詞は、官府等に出頭すること、他動詞は、犯人等を官府等に送り屆けることを指す。『說文』言部には、
詣,候至也。
詣、候(うかが)い至(いた)す也。
という。本簡では、出頭、つまり少内に出向く意味で使われるが、類例としては、例えば1930年代居延漢簡の簡59.36(A8)に
當曲燧長武持府所辟火報詣官。九月丁未日出入。
當曲燧長の武、府の辟する所の火報を持して官に詣る。九月丁未、日出に入る。
と、簡113.12A(A8)に
□□月癸卯,官告第四候 長:記到馳詣官。會
〼毋以它爲解。急如 董雲叩頭,唯卿幸爲持具簿奉賦。
□□月癸卯、官、第四候長に告ぐ。記到らば馳せて官に詣れ。會【……】它を以て解と爲すなかれ。急ぐこと【……が】如くせよ。 董雲、叩頭して、唯だ卿、幸いに爲に具簿を持して奉賦し【……】
とみえる用例が擧げられる。他動詞用法は、簡8-0512や8-1456に確認されるが、出土資料の類例をみると、『封診式』に
037 (前略)某里士五(伍)甲縛詣男子丙,告曰(後略)。
某里士伍の甲、男子の丙を縛りて詣(いた)し、告げて曰わく……。
というように、民閒人が犯人と思しき者を搜査機關に差し出して告發する場合もあれば、同じ『封診式』に
25 群盜 爰書:某亭校長甲、求盜才(在)某里曰乙、丙縛詣男子丁,斬首一,具弩二、矢廿(二十)。(後略)
群盜 爰書。某亭の校長甲・求盜の某里に在りて乙・丙と曰う(もの)、男子の丁を縛りて(詣(いた)し)、斬首一・具弩二・矢二十を詣(いた)す。
と、1970年代の居延漢簡に
建武六年四月己巳朔己丑,甲渠候長昌林劾。將 E.P.T68:31、A8
良詣居延獄,以律令從事。 E.P.T68:32、A8
建武六年四月己巳朔己丑、甲渠候長の昌林が劾。良をば居延の獄に詣し、律令を以て從事せしめたり。
というように、逮捕を伴う公的機關の摘發行爲を指す場合もある。また人のほか、物を屆け出ることについても、「詣」じが用いられる。例えば例えば『法律答問』には、
184 客未布吏而與賈,貲一甲。可(何)謂布吏。●詣符傳於吏是謂布吏。
客未だ吏に布せずして與(とも)に賈(あきな)うは、貲一甲。何をや「布吏」と謂う。●符傳を吏に詣す、是れを「布吏」と謂う。
と、外國の商人が通行證などの書類を官に屆け出る行爲、『奏讞書』には、
214 擧◇疑孔盜傷婢,卽𧭦問黔首,有
215 受孔衣器、錢財,弗詣吏,有罪。走馬僕詣白革鞞、係絹,曰:公士孔以此鞞予僕。不智(知)安
216 取。(後略)
擧◇、孔の婢をを盜傷せるを疑い、卽ち黔首に𧭦問せらく、孔より衣器・錢財を受くる有るに、これを吏に詣さずんば、罪有らん、と。走馬の僕、白き革鞞・係絹を詣して曰わく、公士の孔、此の鞞を以て僕に予えたり。安(いずこ)より取るや知らず、と。
と、犯罪の證據物と思われる物品を告知を通じて官側に屆けさせる樣子が窺える。
[ii] 官職名担当(鄕守については簡8-0769に既出だが、鄕守が自ら文書を届け出ていることについて案語が必要)