讀下:8-0647a=b

文書構造

讀み下し文

文書本體

書出

【某年某月某日朔□】□、酉陽守丞の又(ゆう)、敢えて遷陵丞主に告ぐ。

本文

状況説明

令史[i]曰わく、

令佐の莫邪、自言すらく、

上造[ii]【……】□、莫邪の衣用錢[iii]五百を遣るも未だ遷陵に到らず。

問うらく、

莫邪の衣用錢、已に【酉陽に】到る【や……。】

用件

之れを問うに[iv]

莫邪の衣用錢、未だ酉陽に到らず。

附記

已に書を沅陵[v]に騰(つた)えたり。

書止

敢えて主に告ぐ。

附記

集配記録

【(某月)某日、水……】刻、隸妾の少、以て來る半(ひら)

作成記録

彼死手す。

[i] 令史、婉曲表現としては初出、官職名担当。注案:

令史、……(簡8-1518+8-1490注?参照)、ここでは県の長吏を指す婉曲表現として用いられる。里耶以外に同様な用法があれば、引用。「卒人」との類似性に言及すべし。

[ii] 上造、秦漢の爵名の一つ(簡8-2149+8-2121注?参照)。陳述が通常本人の身分に関する記述から開始されることから、「上造」は、申請人の莫邪の保有する爵位と考えられる。

[iii] 初出。(衣用銭の「仕送り」については簡J1⑫2301(鈴木┘ジュメ「里耶秦簡『選編』その3」1頁を参照)

[iv] 案語(文書構造){二つの「問」字が紛らわしいほか、令史もどこの令史を指すかは一般の読者には必ずしも判らない→次の事項に分けて文書の構造を説明すべし

・「令史」=遷陵丞主の婉曲表現

・「問うらく」=遷陵から酉陽に宛てた質問(この理解に基づいて「【酉陽に】」を補った)

・「之れを問うに」=酉陽における調査の結果。

・酉陽は、同じ酉水に沿って遷陵県の東隣。そこから酉水を下って沅水に入ると、沅陵県に至るので、酉陽は、沅陵から遷陵への輸送の中間地点に位置する。沅陵から発送された衣用銭が遷陵に到着にしなかったので、中間地点に問い合わせて所在を調査していると考えられる。

[v] 案語(文意){洞庭郡治の沅陵県への言及は、令佐の莫邪が郡外から転入し郡経由で家族からの送金が行われるためか。莫邪が文書発信の当時遷陵県に勤務していたことにも言及すべし。}