讀下:8-0209a=b

文書構造

讀み下し文

添付書類(鞫状)

標題

二十七年(220)八月丙戌(13),遷陵の拔、歐を訊ぬ。

本文

辭に曰わく、

上造、成固(縣)畜園(里)に居り、【遷陵が丞】たり。【故(もと)と啓陽が丞たりき。失(あやま)ちて騶奇に爵を拜せしむ。它論有り、此れと與に相遝ぶ[i]。它は前/劾(?)の如し。】

附記

【●史の某、(?)[ii]】獄を視る[iii]に、歐、男子の毋害の、詐僞して自ら爵する【も(これを)得ざる】[iv]に坐す。【獄史の角、曹す 。●六月丙子、歐を貲二甲に論じたり。…………。】

文書本体(鞫書)

標題

●鞫(きわめたず)ぬるに、

本文

歐、失(あやま)ちて騶奇に爵を拜せしむ。它論[v]有り、二甲を貲(はか)る。此れと與(とも)に【事を】同じく[vi]して【相遝ぶ。】

書き止め

【審(つまび)らかなり。】

[i] 相遝ぶ、『為獄等状』事案6を参照。(なお、「相遝ぶ」とは関連する意味だけか、吸収させる意味を含んでいるか?「決相遝ぶ」は判決が関連する意味なのに対して、「不当相遝」は「まさに相遝ぼすべからず」と読めば、吸収する意味を直接に表すか?)

[ii] 本簡と記載内容が近い簡9-0706では、「●史有視獄」というように、訊問主宰者の拔らではなく、獄史の有が「視獄」を行っていることが明示されていることから、本簡に記されている取り調べにおいても、關連事案のファイルを確認する作業が當直の獄史等によって行われており、それが「●史某視獄」もしくは「●獄史某視獄」という形で明記されていた可能性が高い。殘缺部分の補塡はそうして推測に基づく。

一方、獄史の明記がない可能性も完全に否定できない。本簡と同じく拔による歐の取り調べが記錄されている簡9-2318でも、「視獄」の二字が第二行の冒頭に置かれており、偶然の一致のほか、兩簡とも「視獄」の前で改行した可能性が疑われる。書類調査を行った獄史の明記がなければ、訊問主宰者の「拔」が「獄を視る」という句の主語となるが、それもまた責任主體を明確にする意味では、實際誰が過去のファイルを調べたかを問わず、それで一つの正しい表記とも考えられよう。

[iii] 視獄、視は、注意してみる、調べる意(簡…注…を參照)、獄は、司法事案もしくはその關連書類(簡……)を意味し、視獄とは、(過去の)司法事案の書類を調べることをいう。『奏讞書』事案17簡099では、乞鞫を受けた再審手續の冒頭に、「覆視其故獄(其の故の獄を覆視するに)」と稱し、『爲獄等狀』事案04「芮盜賣公列地案」においても、郡から差し戾された事案の冒頭には、「視獄(獄を視るに)」として、丞の暨による劾から始まる初審の記錄がまず確認される。本簡および簡9-2318では、騶奇もしくは賞橫という人物に對して誤った爵位授與を行ったとして二十七年八月に取り調べを受けている歐は、同年六月にも類似事件で貲二甲に處せられており、事件が「事を同じくして相遝ぶ」として關連性が指摘されている。そのため、六月に處斷された事案の書類を調べる必要が生じたと考えられる。

[iv] 『二年律令』:

394        諸𧧻(詐)僞自爵免、爵免人者 ,皆黥爲城旦舂。吏智(知)而行者,與同罪。

[v] 它論、論は論断、判決、つまり他の判決、ここでは、毋害の爵位に関わる詐僞を見破れなかった罪に関わる論断を指す。その罪については六月に既に「貲二甲」に処されたが、騶奇の拝爵に関わる本事案は「事を同じくして相遝ぶ」としてそれに吸収させてしまうというのが、鞫の主旨であろう。

[vi] 事を同じくする、事は職務の意」(『説文解字』史部「職」)、同じ職務に関わることをいうか。(視事・從事・死事の事もすべて職務を指す。)