文書構造 |
讀み下し文 |
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文書本體 |
書出 |
三十一年(216)後九月庚辰朔甲【申(05)[i]、某職の某人、】之れを卻(しりぞ)く。 |
用件 |
諸々の徒隸の當(まさ)に吏が僕・養と爲すべき者は、皆な倉に屬す。□【......】倉及び卒長の䦈(さ)の署する所なれば、倉、これを知らざるに非らざるなり。蓋し[ii]、【......】何故書を近所の官に[iii]騰(つた)えず、直(ただ)ちに、眞書を上すと曰う。狀は何如【......】□□□□□□【......。】[iv] |
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書止 |
【......。】 |
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附記 |
送達記錄 |
後九月甲申(05)、旦食時、【某人、以て來る/(某處に)行る。(/某半。)】 |
作成記錄 |
尚手。 |
[i] 申字は、背面の記載に據る。施謝捷『里耶秦簡釋文稿』にもすでにこの字は補われている。
[ii] 蓋、校釋は人名とするが、そうとも斷定できない。
[iii] 近所官、近所の縣官、具體的にどちらの縣官を指すかは未詳。近所は、『漢書』馮奉世傳に
發近所騎。
近所の騎を發(うご)かす。
と見えており、顏師古注には、
近所,隨近之處也。
近所、隨近の處なり。
という。遠近は、『秦律十八種』に
139 (前略)官作居貲贖責而遠其計所官者,盡八月各以其作日及衣數告其計所官,毋過九月而觱(畢)到
140 其官。官相紤(近)者,盡九月而告其計所官。計之其作年。
官作、貲に居して責めを贖うに、その計する所の官より遠き者は、八月を盡くして各々その作日及び衣數を以てその計する所の官に告ぐ。九月を過ぎずして畢(ことごと)くその官に到らしめよ。官の相近き者は、九月を盡くしてその計する所の官に告ぐ。これをその作せる年に計せよ。
というように、複數の役所に跨る行政處理に重要な意義を持ち、提出期限等の差異として反映されることが多い。近所官に類似した表現としては、1930年代居延漢簡に
畜產詣近所亭隧鄣,辟收葆止行 539.2,A33
【……】畜產、近所の亭・隧・鄣に詣し、辟して收葆し止行【……】
とみえる「近所の亭・隧・鄣」という表現が注目に値しよう。
[iv] 案語(このままでは本文書が何を言っているか分からないが、例えば簡8-0648の「縣卒の𤺊」を巡る司空の上申文書に対する返答として読めば、なぜ司空が倉や卒長に問い合わせもせずにいきなり「真書」を県廷に上呈しているかと問い詰める県丞もしくは県令の姿が浮かび上がってくる。そうした想定に基づいて本文書の文意を説明すべし。「直」の読み方も