文書構造 |
讀み下し文 |
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文書本體 |
書出 |
三十一年(216)六月壬午朔庚戌(29)、庫の武、敢えて之れを言う。 |
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本文 |
状況説明 |
廷が書に曰わく、 |
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吏に令して律令を操(と)り[i]廷に詣りて讎(ただ)させよ。書の到れる、吏の起ちし時を署(しる)せ[ii]。追[iii]有り。 |
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用件 |
┘今 |
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庚戌(29)を以て佐の處を遣りて讎せしめたり。 |
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書止 |
敢えて之れを言う。 |
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附記 |
集配記録 |
七月壬子(02)、日中、佐の處、以て來る。/端發(ひら)く。 |
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作成記録 |
處手す。 |
[i] 操、手に持つ、たずさえる。『説文解字』手部には、
操,把持也。
操、把(と)りて持つ也。
といい、『礼記』曲礼上には、
必操几杖以從之。
必ず几杖を操(と)りて以て之れに從う。
という。『奏讞書』には、
131 (前略)義等戰死,新黔首恐,操其叚(假)兵匿山中。(前略)
義ら戰死すれば、新黔首恐れて、其の假りたる兵を操りて山中に匿る。
と、新たに帰順した人々が、貸与された武器を持ったまま山中に逃げ隠れる様子と、
221 (前略)適雅欲𦾑(剽)盜,詳(佯)爲券,操,視可盜,盜置券其旁,
222 令吏求賈市者,毋(勿)言(音-意)孔。(後略)
(孔は)適(まさ)に雅(もと)より剽盜せんと欲し、佯(いつわ)りて券を爲りて操り、盜むべきを視(み)る。盜まば、券を其の旁らに置き、吏に令して市に賈(あきな)う者を求めて、孔を意うなからしめんとす。
というように、盗みの機会を窺っている犯人が、偽造の契約文書を携帯し、犯行現場にそれを残して操作の妨害を企てている様子が描かれている。1930年代の居延漢簡には、
(前略)卽有吏卒民屯士亡者,具署郡縣里、名姓、年、長、物色、所衣服齎操、初亡年月日、人數,白。 303.15/13.17,A35
卽(も)し吏卒民屯士の亡ぐる者有らば、具(つぶさ)に郡縣里・名姓・年・長・物色・衣服と齎操する所・初めて亡ぐるの年月日・人數を署して白(もう)せ。
というように、逃亡者に関する報告を求める指示の中で、携帯品を「齎操する所」と表現している。
[ii] 文書集配記録および官吏派遣の管理に関する案語(飯田担当)
関連史料:
『秦律十八種』
184 行傳書、受書,必書其起及到日月夙莫(暮),以輒相報殹(也)。(後略)
嶽麓秦簡(肆)の律令簡牘:
223/1271 □律曰:傳書受及行之,必書其起及到日月夙莫(暮),以相報,報宜到不來者,追之。
居延漢簡:
九月庚子府告甲渠鄣候尉史忠平甬府事已遣之官日時在檢中到課言 E.P.F22:290,A8
[iii] 追、初出(鈴木レジュメ「里耶秦簡訳注〇一戊「告」類」(2017年2月18日付、実際の講読は3月18日)には次のようにあり参考にできるが、簡8-0060+8-0656+8-0748+8-0665にみえるように、使用範囲は、催促・督促に限定されないので注意を要する。)
鈴木レジュメ:
睡虎地秦簡行書律によれば、返信を求めたにもかかわらず返信がないときなどに催促すること。
行傳書・受書、必書其起及到日月夙莫(暮)、以輒相報殹(也)。書有亡者、亟告官。隸臣
妾老弱及不可誠仁者勿令。書廷辟有曰報、宜到不來者、追之。行書。(睡虎地秦簡
秦律十八種、第184~185簡)
《参考文献》鷹取祐司『秦簡官文書の基礎的研究』(汲古書院、2015年)第二部第二章第二節