讀下:8-0159c=a=b

文書構造

讀み下し文

添付書類②

(制書)

文書本體

書出

制書[i]に曰わく、

用件

事の恆程と爲すべき者を擧げて、丞相に上せ。

洞庭の絡裙が置(はか)らいを上せ。

附記

書有り[ii]。釦手す。

添付書類①

(御史書)

文書本體

書出

三十二年(215)二月丁未朔辛亥(05)、御史丞の去疾、丞相に下す。

状況説明

[iii]に曰わく、

事の恆程と爲すべき者を擧げよ。

裙が置(はか)らいを上せ。

用件

卽(ただ)ちに令に應ぜよ。これに應ぜずんば、謹みて案致し【……せよ。】

【事の恆程と爲すべき者(?)は[iv]】丞相【に上し[v]、】□(置(はか)らい?)は洞庭守□(府?)に上せ 。

書止

-

附記

作成記錄

/□手す。

洞庭郡下行文書

書出

三月丁丑朔壬辰(16)、洞庭【……。】

状況説明

【……】令。

用件

臨沅は、𡩡・門淺・上衍・零陽に下せ。各々、道次[vi]を以て別書を傳え、皆な郵を以て行れ。

書到らば相報ぜよ[vii]。報ぜずんば追せよ。𡩡・門淺・上衍・零陽は、書の到れるを言え[viii]

附記

□□發(ひら)けと署(しる)せ。

道ごとに一書[ix]

洞庭發弩が印を以て事を行う。

附記

回覧附記(?)

●遷陵、酉陽に報ずるに、令發(ひら)けと署(しる)せ。酉陽、充に報ずるに、令發(ひら)けと署(しる)せ。

送達記錄

/四月癸丑(08)、水十一刻、刻下五、都郵人の辰、以て來る 。/□發(ひら)く。

作成記錄

□□手す。

未詳

【……】□□恆署。

[i] 制書、文書形式の一つ、制は裁決、書は文書の意、皇帝が臣下の議・上奏等に裁決を与える文書形式。『説文解字』刀部には、

𠛐(制),裁也。从刀、从未。未,物成有滋味,可裁斷。

制は、裁(た)つ也。刀に从い、未に从う。未は、物成りて滋味有り、裁斷すべし。

という。『爲獄等状』の事案十五「綰等畏耎還走案」には、

243(3)    □臣信(?)請取得(?)

244   皆致灋(法)焉。有(又)取卒畏耎◇(最)先去、先者次(?)十二人,完以爲城旦、鬼薪。有(又)取其次(?)十四人,耐以

244(2)    爲隸臣。其餘皆奪爵以爲士五(伍);其故上造以上,有(又)令戍四歲,公士六歲,公卒以下八歲。□

244(3)  臣昧死請。●制曰:可。

【……】□臣の信、請うらくは、得(=人名)【……】を取り【……】皆な法に致さん。又た卒の畏耎にして最も先んじて去る(もの)、先んずる者の次十二人を取り、完うして以て城旦・鬼薪と爲さん。又た其の次十四人を取り、耐して以て隸臣と爲さん。其の餘は皆な爵を奪い以て士伍と爲し、其の故(もと)上造以上なるは、又た令して戍せしむること四歲、公士は六歲、公卒以下は八歲。□臣、昧死しいて請う。●制して曰わく、可なり、と。

というように、臣信の判決案に対して、「制」の形で裁可が与えられる。『二年律令』には、

512   十三,相國上内史書言,諸以傳出入津關而行產子駒未盈一歳,與其母偕者,津關謹案實籍書出入。●御史以聞。制曰,可。

十三、相國、内史が書を上して言わく、諸(すべ)て傳を以て津關を出入し、行きて子駒を產み未だ一歳に盈たず、其の母と與(とも)に偕(つれだ)つ者は、津關、謹みて籍書を案實して出入せしめよ、と。●御史以聞す。制して曰わく、可なり、と。

と、皇帝の裁決を経て法令が制定される過程が窺える。『後漢書』光武帝紀の李賢注に引くところの「漢制度」によれば、「制書」は、四種ある「帝之下書」の一つで、「州郡に露布する」(蔡邕『独断』今本も同じ)ものと説明され、また『二年律令』には

265   (前略)令郵人行制書、急

266   書,復勿令爲它事。(後略)

郵人に令して制書・急書を行らしめ、復して令して它事を爲さしむるなかれ。

とあることから、制書は、「急書」とともに郵人によって逓伝されることが原則のなっていたようである。嶽麓秦簡の律令簡牘には、

194   ●行書律曰:有令女子、小童行制書者,貲二甲。能捕犯令者,爲除半歲䌛(徭),其不當䌛(徭)者,得以除它

195   人䌛(徭)。

というように、制書の逓伝に関するさらに詳しい規定が見える。

[ii] 有書、初出。(有令・有券・有約等との類似性に留意すべし。証拠物としての文書・法令・券書など)

[iii] 令、命令(簡8-0652+8-0067注?參照)、ここでは、前揭の制書を指す。

[iv] 事可爲恆程者、本簡の「令」および簡⑧0152の「御史書」に基づいて補った。丞相と洞庭守府は何れも上呈もしくは報告を意味する動詞の目的語と考えられ、文脈からすれば、上呈すべき對象はそれぞれ「令」および「御史書」にみえる「事の恆程と爲すべき者」と「絡裙が置(はか)らい」であると推定される。

[v] 上、本簡の「令」および簡⑧0152の「御史書」に基づいて補った。前注を參照。

[vi] 道次、道は、文書の遞送經路(簡8-0657注?を參照)、次は、リ┘ー式遞送の順序(簡8-1518+8-1490注?と簡8-0407+8-0416+8-1185+8-0169+8-0233注?を參照)、道次は、各遞送經路における所定の遞送順序をいう。居延漢簡の簡203.22(A8)には、

臚野王丞忠下郡、右扶風、漢中、南陽、北地大守:承書從事。下當用者。以道次傳別書,相報,不報〖者重追之(?)〗。書到言。 掾勤、卒史欽、書佐□。

臚野王丞の忠、郡・右扶風・漢中・南陽・北地大守に下す。書を承けて從事せよ。當に用うべき者に下せ。道次を以て別書を傳えよ。相報ぜよ。報ぜずんば、之れを重追せよ。書到らば、言え。 掾の勤、卒史の欽、書佐の□。

と、1970年代居延漢簡の簡E.P.T50:48(A8)には、

七月癸亥,宗正丹〖下〗郡司空、大司農:丞〔承〕書從事。下當用者。以道次傳別書。相報。不報者

重追之。書到言。

七月癸亥、宗正の丹、郡司空・大司農に下す。:書を承けて從事せよ。當に用うべき者に下せ。道次を以て別書を傳えよ。相報ぜよ。報ぜずんば、之れを重追せよ。書到らば、言え。

と、多くの類例が見える。

[vii] 本文書の受領報告は、8-0158に見える。

[viii] 案語(「書到相報」と「書到言」の違いを説明すべし)

[ix] 案語(逓伝経路ごとに一書という文意のほか、「臨沅下𡩡、門淺、上衍、零陽」との関係を説明すべし。郡所在地が沅陵、郡尉所在地が新武陵とすれば、本文書の下達経路および下達形式は実に分かりにくい!)