讀下:8-0152a=b

文書構造

讀み下し文

文書本體

書出

三十二年(215)四月丙午朔甲寅(09)、少内守の是、敢えて之れを言う。

本文

状況説明

廷、御史が書[i]を下すに、

事の恆程[ii]と爲すべき者を擧げよ。洞庭は、裙[iii]が置(はか)らい[iv]を上せ。書到らば言え。

用件

書已に到れり。

書止

敢えて之れを言う。

附記

集配記録

四月甲寅(09)、日中、佐の處、以て來る。/欣(きん)發(ひら)く。

作成記録

處手す。

[i] 案語(①関連文書の相互関係・②下達や受領報告の経路・③文書の保管技術について説明すべし)

文書の相互関係:

8-0152   少内の上申文書、受領報告

8-0158   遷陵から酉陽に対する平行文書、受領報告

8-0159   制書と遷陵までの下達文書

8-0155   遷陵から少内への下達文書。下達の際は、8-0159の写しを添付

文書の保管技術:

8-0153   標題

一部の簡牘には編綴痕が認められるが、この五枚が冊書もしくは束として一緒に保管された証拠はどれだけ集められるか、形態上の特徴を改めて比較検討すべし。

[ii] 程、初出。

恆程、初出。(「恆某」はそのほかに「恆署書」(8-1073)・「恆署」(8-0159)「恆賦」(8-0433)「恆籍」(秦律十八種011)・「恆事」(秦律十八種122)・「恆數」(法律答問052)・「恆書」(封診式048)・「恆馬」(嶽麓(四)313)・「恆秩」(二年律令214)等あり、統一的解釈を試みるべし。なお、副詞の「恆」は、8-0062に注を挿入。また、嶽麓秦簡「秦律令(貳)」108簡に「恆署書皆以郵行」、「秦律令(壹)」196簡に「毋敢令年未盈十四歳者 行縣官恆書」とあり)

[iii] 裙、肌着か、一説には軍服の一種とも言うが、文脈から正確な意味が確定し難い。『説文解字』巾部

帬,下裳也。

帬、下裳なり。

という。

[iv] 「直」は、「値」に通じ、措置・はからいの意。傳世文獻では多く「置」を假借する。『説文解字』人部には、

値、措也。

値、措(お)く也。

と言い、朱駿聲『說文通訓定聲』は、

經傳多以置爲之。

經傳、多く置を以てこれを爲す。

と注記する。本簡に記されている少内の上行文書は、8-0159に見える制書に基づいており、8-0153がその表題簡と考えられるが、表題には「直(値‐置)」は

御史問直(値‐置)絡裙程書

御史、絡裙を置くの程を問うの書

というように、明らかに動詞として用いられており、意味は「措置する」・「はからう」と推定される。「裙」は、「はだき」、或は李學勤「初讀里耶秦簡」や『校釋』の説くように、軍服に用いられる可能性がある。「裙置」は、裙を措置すること、つまりはだきの調達をいうが、表題簡の「程」から判るように、ここでは實際の調達狀況ではなく、調達のノルマを指すと考えられる。

なお、段玉裁は、『説文解字』人部の「値」字について、

持,各本作措。措者,置也,非其義。今依韻會所據正。韻會雖譌待,轉刻之失耳。(後略)

持、各本「措」に作る。措は、置く也、其の義に非らず。今『韻會』の據る所に依りて正す。『韻會』、待に譌(あやま)ると雖も、轉刻の失なるのみ。

というように、「措」を「持」の誤りとするが、里耶秦簡に、「措置」という字義の「直(値)」の用例が出現したことによって、「其の義に非らず」という論法が當たらないことが示される。