讀下:8-0135a=b

文書構造

讀み下し文

添付書類②

【某校券】

添付書類①(自言文書)

書出

二十六年(前221)八月庚戌朔丙子(27日)、司空守の樛(キュウ)、敢えて之れを言う。

本文

資料根據

前日言わく[i]

競陵漢陰の狼、遷陵が公船一、袤(なが)きこと三丈三尺[ii]、名[iii]は□と曰うを假(か)り,以て故荆[iv]の積[v]・瓦[vi]を求む。未だ船を歸さず[vii]。狼、司馬の昌官に屬す[viii]。謁うらくは、昌官に告げ、狼に令して船を歸さしめよ。

┛報じて[ix]曰わく、

狼、逮有り、覆獄巴卒史[x]の衰・義が所に在り。

用件

校券[xi]一牒を寫し、上す。謁うらくは、巴卒史の衰・義が所に言い、狼に、船の存ずる所を問わしめよ。其れ、之れを亡(うしな)いたらば、責券[xii]を爲(つく)りて遷陵に移せ。これを亡わずんば、誰にや(これを)屬(たの)みし。

附記

報ぜられんことを謁う。

書止

敢えて之れを言う。

附記

送達記錄

八月戊寅(29日)、走の己巳、以て來る。懬半(ひ)く。

作成記錄

 □手す。

文書本體

書出

九月庚辰(2日)、遷陵守丞の敦狐、之れを卻(しりぞ)く。

本文

司空、自ら二月を以て狼に船を假したるに、何故これを蚤(はや)く辟せず、今に到りて甫(はじ)めて覆獄卒史の衰・義に問わんことを謁うと曰う。衰、義が事[xiii]已(や)みたれば、居る所を知らず。

書止

其れ書に聽(したが)いて從事せよ。

附記

送達記錄

卽(ただ)ちに走の□に令して司空に行(や)る。

作成記錄

/懬手。

[i] 前日言、前日は先日・過日(簡8-0677注?を參照)、言は上申文書の發信形式、ここでは、司空守の樛が以前に縣廷に上申した文書を指す。

[ii] 三丈三尺、丈は、……(簡8-1510注?參照)、尺は、初出。

[iii] 名は恐らく船の名を指す。(異説があったがそれを紹介すべきか)

[iv] 故荆、もとの楚國。『呂氏春秋』音初の高誘注には、

荆,楚也。秦莊王諱楚,避之曰荆。

荆、楚なり。秦莊王、楚を諱めば、之れを避けて荆と曰う。

といい、さらに、簡8-0461には、

(吳)曰荆。

吳と曰い、荆と曰え。

と、東漸以後の呉の故地と區別して、楚の西方の故地を荆と呼ぶように規定している。一説には、楚の舊都、つまり秦昭王二十九年に白起が攻落して南郡を置いた郢都。

[v] 積、穀物等の備蓄もしくはその備蓄品、ここでは後者を指す。『説文解字』禾部は積の字義を「聚」とし、朱駿聲と段玉裁はそれをそれぞれ、

禾穀之聚曰積。(『説文解字通訓定聲』朿聲)

禾穀の聚(たくわ)えをば積と曰う。

と、

禾與粟皆得偁積。引伸爲凡聚之偁。(『説文解字注』禾部)

禾と粟は皆な積と偁するを得。引伸して凡そ聚むるの偁と爲す。

と注釋する。

居則具一日之積,行則備一夕之衞。

居らば則ち一日の積を具え、行かば則ち一夕の衞を備う。

という『左傳』僖公三十三年の用例に對して

積,芻、米、菜、薪。

積、芻・米・菜・薪なり。

というように、杜預の注は、範圍をやや擴大しつつも、備蓄された穀物等の意に捉える。實際に、出土資料では、積は穀物等の備蓄もしくはその備蓄品の意味で用いられており、漠然として物を積み重ねるもしくは貯藏することを表す用例は見當たらない。嶽麓秦簡(四)の律令簡牘には

169   ●内史雜律曰:芻稾廥、倉、庫、實官、積,垣高毋下丈四尺,瓦蘠(牆),財(裁)爲候,晦令人宿候,二人備火,財(裁)爲池

170   □水。宮中不可爲池者財(裁)爲池宮旁。

と、『二年律令』には

004   賊燔城、官府及縣官積㝡(聚),棄市。賊燔寺舍、民室屋、廬舍、積㝡(聚),黥爲城旦舂。

賊のごとく城・官府及び縣官の積聚を燔くは、市に棄(す)つ。寺舍・民の室屋・盧舍・積聚を賊燔せば、黥して城旦舂と爲す。

と、備蓄された穀物を指す。なお、『秦律十八種』に

021   入禾倉,萬石一積而比黎之爲戶。縣嗇夫若丞及倉、鄕相雜以印之。(後略)

024   (前略)入禾未盈萬石而欲增積焉,其前入者是增積,可殹(也);其它人是增積,積

025   者必先度故積,當堤(題),乃入焉。後節(卽)不備,後入者獨負之。(後略)

禾を倉に入るるに、萬石もて一積とし、これを比黎して戶を爲(つく)る。縣嗇夫若しくは丞及び倉(嗇夫)・鄕(嗇夫)、相雜えて以てこれに印をす。禾を入るるに未だ萬石に盈ちずして增して積(つ)まんと欲するや、其の前に入るる者是れ增して積むは、可なり。其の它の人是れ增して積むは、積む者必ず先に故(もと)の積を度(はか)り、題に當(かな)いて乃ち(禾を)入る。後に卽(も)し備わらずんば、後に入るる者獨りこれを負う。

と見えるように、穀物等の備蓄品という字義は、穀物を積み重ねて「積」という單位で保管するという特殊な貯藏方法に由來しており、そのまま瓦等の保管に擴大解釋できないように思われる。

[vi] 瓦、かわら。『封診式』には、

008   (前略)●甲室、人:一

009   宇二内,各有戶,内室皆瓦蓋,木大具(椇),門桑十木。(後略)

という。「瓦」字を土器・陶器の總稱と解釋する向きもあるが、出土資料で土器若しくは陶器を指す用例は「瓦器」や「瓦罋」というように、他の器物を修飾する場合に限られるようである。本簡の文脈からしても、官有船舶の貸與の目的としては、土器運搬はやや曖昧な嫌いがある。

[vii] 歸(返却)、初出。

[viii] ここの「属する」とは舎人の類か、官職名担当の教示を仰ぐ。

[ix] 報、ここでは、縣の返答をいう。縣が司馬の昌官に事實確認の上返答した可能性が高い。

[x] 案語(覆獄は簡8-0144+8-0136に既出。ここは、他郡からの出張者が覆獄を担当する点を説明すべし。『奏讞書』事案18の南郡卒史による蒼梧郡攸県の覆獄等にも言及すべし)、官職名担当。

[xi] 校券、券書の形態を持った監査用の状況説明(簡8-0060+8-0656+8-0748+8-0665注?參照)。簡8-0060+8-0656+8-0748+8-0665にいう「爲校券」と違って、本簡では、「寫校券」という表現が用いられることから、券書の照合機能が失われていることが判る。換言すれば、本簡のいう「校券」は、監査用に提出される券書の寫しに過ぎない。記載内容については詳細は不明だが、船舶紛失の事實確認後卒史によって始めて賠償責任債務に關わる「責券」が作成される段取りとなっていることから、校券が專ら未返還船舶の會計處理に關わると考えられる。

[xii] 責券、券書の形態を持った債務取立用の状況説明(簡8-0677注?參照)。ここでは、官有船舶の紛失という事實が明らかになった時點、つまり賠償責任債務が確定した時點において始めて責券の發行が想定される點が注目に値する。

[xiii] 事(仕事、業務)、初出。