文書構造 |
讀み下し文 |
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添付書類③ |
【責校券二】 |
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添付書類②(旬陽左公田上行文書) |
文書本體 |
書出 |
二十六年(221)三月壬午朔癸卯(22)、左公田の丁、敢えて之れを言う。 |
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本文 |
状況説明 |
佐の州里の煩[i]、故(もと)公田が吏たりて、屬を徙したり。荅を事(おさ)むる[ii]こと備わらず、各々十五石少半斗を分負し[iii]、錢三百一十四に值(あたい)す。煩、宂佐として,遷陵に署(しょ)す[iv]。 |
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用件 |
┛今 |
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責・校券[v]二を上す。謁うらくは、遷陵に告げ、官の計する者[vi]に令して定め、錢三百一十四を以て旬陽の左公田が錢計より受(う)けしめよ[vii]。 |
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附記 |
問え、何(いず)れの計に付するや。計・年を署(しる)して報を爲せ。 |
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書止 |
敢えて之れを言う。 |
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附記 |
送達記錄 |
- |
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作成記錄 |
兵手す。 |
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添付書類① (旬陽縣平行文書) |
文書本體 |
書出 |
三月辛亥(30)、旬陽丞の滂(ぼう)、敢えて遷陵丞主に告ぐ。 |
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用件 |
寫移し、券を移す[viii]。 |
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附記 |
報を爲すべし。 |
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書止 |
敢えて主に告ぐ。 |
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附記 |
送達記錄 |
十月辛卯(14)、旦、朐忍𡩡秦の士伍の狀、以て來る。/慶半(ひら)く。 |
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作成記錄 |
/兼手す。 |
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遷陵縣下行文書 |
書出 |
二十七年(220)十月庚子(23)、遷陵守丞の敬、司空主に告ぐ。 |
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用件/書止 |
律令を以て從事せよ。 |
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附記 |
言え。 |
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書止 |
- |
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附記 |
送達記錄 |
卽ちに走の申に令して司空に行らしむ。 |
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作成記錄 |
/懬手す。 |
[i] 「佐」を官職名、「州里」を里名としてとったが、「佐州里」という里名の可能性はないか?あるいは「佐州里の煩」に改めるべきかもしれない。
[ii] 事(おさめる)、初出。(簡8-1563の「事(つかえる)」と訓読みこそ異なるものの、もともとは同じ単語で、「こととする」・「つとめる」という字義は同じ。簡8-1563では、漠然として「つとめる」ことを言うのに対して、本簡ではつとめの一環として行う業務(荅)を目的語として伴うから「おさめる」という読み方がよりわかりやすいだけではないか。「事」を「つとめる」と読めば、両簡の読み方は統一できるが、逆に文脈が分かりにくくなる。→読み方は、「つかえる」と「おさめる」とで区別を付けつつも、二つの注では、等しく、「こととする」・「つとめる」という字義を説明して関連性を示すべし)
[iii] 分負、初出。(本案の根拠規定は『秦律十八種』に見える。)
080 縣、都官坐效、計以負賞(償)者,已論,嗇夫卽以其直(値)錢分負其官長及宂吏,而人與參辨券,以效少内。少内以
081 收責之。
分負の過程で発行される「參辨券」は恐らく所謂責券であり、その実例は簡9-0191+9-0327・9-0505・8-0785・J1⑯0002・9-1727・9-1636等という可能性が高い。
その他、居延漢簡には「分負何算」という表現が見えるが、今一つ正確な意味が分からない。完全なものは
肩水禽寇隧長韓武彊Ⅰ 弩一右淵死二分負五筭」蝱矢一差折負二筭」Ⅱ 凡負七筭Ⅲ☆ 73EJT10:131
[iv] 署、持ち場・部署、轉じて手分けすること、仕事を分擔して行うこと、また配屬されて服役すること。『説文解字』に、
署,部署,有所网屬。
署、部署、网屬する所有るなり。
といい、段注は、
部署,猶處分。
部署、猶お處分するがごとし。
という。また、『法律答問』には、
196 可(何)謂署人、更人?耤(藉)牢有六署,囚道一署旞,所道旞者命曰署人,其它皆爲更人。或曰守囚卽更人殹(也),原者署人殹(也)。
何をば署人・更人と謂う。藉(かり)に牢に六署有り、囚、一署道(よ)り旞(に)げば、道(よ)りて旞(に)ぐる所の者は命じて署人と曰い、其の它は皆な更人と爲す。或は曰わく、囚を守するは卽ち更人なり、原(たず)ぬる者は署人なり、と。
というように、「署」を獄内の部署、つまり各人が分擔する持ち場として捉えている。類例は、次の『二年律令』の條文にも見える。
404 乘徼,亡人道其署出入,弗覺,罰金□
徼に乘ずるに、亡人、其の署に道(よ)りて出入し、(これを)覺らざるは、罰金□
手分けするという字義は、
178 (前略)其故儌縣道,
179 各令令守城邑害所,豫先分善署之,財(裁)爲置將吏而皆令先智(知)所主。(後略)
其の故儌の縣道は、各々令に令して城邑の害所を守せしむ。豫先(あらかじ)め分ちて善く之れを署し、裁(はか)りて爲に將吏を置き、而して皆な令して先に主る所を知らしむ。
という嶽麓秦簡(四)の律令簡牘により確認され、服役の用例は、本簡のほか、9-0001等に散見する。
(前略)司空騰敢言之:陽陵宜居士五(伍)毋死有貲餘錢八千六十四。毋死戍洞庭郡,不智(知)何縣署。(中略)洞庭叚(假)尉觿謂遷陵丞:陽陵卒署遷陵。(後略)
三十三年四月辛丑朔丙午、司空の騰、敢えて之れを言う。陽陵宜居の士伍の毋死、貲餘錢八千六十四有り。毋死、洞庭郡に戍するも、何の縣に署するや知らず。洞庭假尉の觿(けい)、遷陵丞に謂う。陽陵が卒は、遷陵に署す。
籾山レジュメは受け身の他動詞として「署せらる」に作る。
[v] 責校券二、責券と校券各々一枚、合わせて券書二枚。「責券」と「校券」とが明確に使い分けられていたことは、簡8-0135の記述により判明する。「責券」が「責」(「せめる」・債權の取り立て、簡8-0677注?參照)のための状況説明なのに對して、「校券」は、校(「竝べて調べる」・上級機關の監査、簡8-1565注?及び簡8-0060+8-0656+8-0748+8-0665注?參照)のための状況説明をいう。
[vi] 官計者、初出。(債務関係は本来少内の管轄ではあるが、本件では居作が想定されているためか、司空に対して処理が指示されるので、「官の計する者」は司空を指すことになる。)
[vii] 受計とは、他の會計より受けたものとして計上することをいう(簡8-1477+8-1141注?參照)が、ここでは、旬陽で發生した債權について、債務者が現在勤務する遷陵縣がそれを回收し、取り立てた錢三百一十四をて、旬陽縣の左公田の錢計より受けたものとして遷陵縣で計上することを指す。取立(「責」)には直接に言及しないが、恐らく「定」(確定する)という作業(簡8-0144+8-0136注?參照)に含まれるのではないかと推測される。
[viii] 「寫移」が寫しを作成して送付することなのに對してし、「移券」は、「券」の現物を送付することをいう。券には刻齒が刻まれており、寫しより信憑性が高い。簡8-1525の「下券」も、平行と下行の違いはあるものの、同樣に現物の送付を表す。それに對して、簡8-0677の「寫責券一牒,上」は、寫しの送付を指す。