讀下:6-07=8-0560=8-0517+8-0619

文書構造

讀み下し文

添付書類

文書本體

書出

【某年某月某日朔某日、某職の某人、……。】

本文

【……。】

書止

【……。】

附記

集配記録

【……。】

作成記録

【某手す。】

文書本體

書出

【某月(某日朔)某日、遷陵の某、】敢えて之れを言う。

本文

状況説明

前日言えらく、

當(まさ)に徒隸が爲に衣を買い及び吏に益僕[i]を予(あた)うべきに、錢八萬を用い、見錢[ii]無し。

[iii]、報じて曰わく、

臧錢[iv]を臨沅より五【萬……】取り、【……せよ。】

用件

【今】

【……】萬、見錢無ければ、謁うらくは【……。】

書止

【敢えて之れを言う。】

附記

集配記録

【……。】

作成記録

【某手す。】

[i] 益僕、僕は役人に下僕として貸し與えられる徒隸、益僕は、增員分の僕か。僕の支給については、『秦律十八種』に、

073(前略)都官佐、史不盈十五人者,七人以上鼠(予)車牛
074   僕,不盈七人者,三人以上鼠(予)養一人。小官毋(無)嗇夫者,以此鼠(予)僕、車牛。(後略)
都官の佐・史、十五人に盈たざる者は、七人以上ならば車牛・僕を予(あた)え、七人に盈たざる者は、三人以上ならば養を一人予う。小官 の嗇夫なき者は、此れを以て僕・車牛を予う。

と、都官の屬吏に限定される形ではあるが、明文規定が殘されている。僕に當てられる徒隸が不足する事態もまま生じたことは、

165   ●倉律曰:毋以隸妾爲吏僕、養、官【守】府┘。隸臣少,不足以給僕、養,以居貲責給之;及且令以隸妾爲吏僕、
166   養、官守府,有隸臣,輒伐〔代〕之┘。倉、廚守府如故。
●倉律に曰わく、隸妾を以て吏が僕・養、官が守府と爲すなかれ。隸臣少く、以て僕・養を給するに足らずんば、貲責に居するを以て之れを給す。及(ま)た且(しばら)く令して隸妾を以て吏が僕・養、官が守府と爲さしむ。隸臣有らば、輒(ただ)ちに之れに代えしめよ。倉廚は守府すること故(もと)の如くせよ。

という嶽麓秦簡(肆)の律令簡牘の記述から推測される。「益僕」はそうした不足を解消するために特別に用意された徒隸とも考えられる。簡8-0877+8-0966には、苑中の吏に支給されるはずであった「益僕」を私的に留めて使役等をした廉で戌という人物が取り調べを受けたことが記されている。

[ii] 見、現有の意、その時點で所藏されている物品や財物に冠せられることが多い。『漢書』王嘉傳には、

是時外戚貲千萬者少耳、故少府・水衡見錢多也。
是の時、外戚の貲千萬なる者少し、故に少府・水衡の見錢多きなり。

とあり、顏師古注には

見在之錢也。
見在の錢なり。

という。睡虎地秦簡『效律』には、

12       縣(懸)料而不備其見(現)數五分一以上,直其賈(價),其貲、誶如數者然。十分一以到不盈
13       五分一,直過二百廿(二十)錢以到千一百錢,誶官嗇夫,過千一百錢以到二千二百錢,
14       貲官嗇夫一盾,過二千二百錢以上,貲官嗇夫一甲。(後略)

懸料して、其の現數を備えざること五分の一以上ならば、其の價を直(はか)れ。其の貲(はか)る・誶(せ)むるは、數が如くして然らしめよ。十分の一より五分一に盈たざるに到るは、直(あたい)、二百二十錢を過ぎて以て千一百錢に到らば、官嗇夫を誶(せ)め、千一百錢を過ぎて以て二千二百錢に到るは、官嗇夫に一盾を貲(はか)り、二千二百錢以上を過ぎば、官嗇夫に一甲を貲れ。

とあり、「見數」は廣く物品や財物の現有の數量を意味することが多い。

しかし、簡8-0625+8-1067や8-0487+8-2004には過去のデータについても「見」字を用いるから「現有」という表現は必ずしも正確ではない。李均明〈里耶秦簡“真見兵”解〉,《出土文獻研究》(第十一輯),130—133頁/王偉、孫兆華:《“見戶”與“積戶”:里耶秦簡所見遷陵編戶數量》,《四川文物》2014年第2期,62—67頁/黃浩波〈里耶秦簡牘所見“計”文書及相關問題研究〉,《簡帛研究二〇一六(春夏巻)》,86-87頁を参照。

見錢、現有の錢。遷陵縣、もしくは少内などにその時點で所藏されている錢をいうのであろう。縣所藏の錢の用途は複數考えられるが、一例として肩水金關漢簡には

錢入其縣、邊以見錢取庸。(後略)                       73EJT37:1164
錢其の縣に入り、邊は見錢を以て庸を取る。

とあり、邊境において官が人を雇う際に、官府所藏の錢が用いられていたことが窺われる。

[iii] 府は、本文書の受信者である洞庭太守府を指すと考えられる。

[iv] 臧錢、初出。