釈読問題8-0054

基礎形態:……

加工形態:……

特記事項:

……

  

第一行

「傳」と一字のみ書かれている簡牘は形狀が通常の封緘簡牘と同じである。文書が郵等によって遞送されるため、封緘簡牘には通常宛先が書寫されるため、「傳」の一字についても、宛書の可能性が考えられる。「傳」に宛てた封緘簡牘には、遷陵縣の傳舍に治所を構えた覆獄沅陵獄佐の己に宛てられた簡8-0255があり、その「傳」字が「傳舍」の略稱であることは、「傳舍」に治所を開いた沅陵獄史に宛てた簡8-1058と8-0940の類例によって裏付けられる。一方、遷陵縣の「傳舍」に專屬の官吏が配屬された形跡がなく、「傳舍」は獨立した官署ではなく、倉等の役人によって管理された宿泊施設に過ぎない可能性が大きい。宿泊施設に治所を開設した旅行者ではなく、宿泊施設そのものに文書を送付する意味がないため、「傳」とのみ記された封緘簡牘はむしろ通行證明書の「傳」を封緘するために用いられたと考えられる。通行證明書は旅行者が携帶するので、宛書ではなく、むしろ内容の明記が必要になる。「傳」の一字はそうした内容表記と推測される。なお、通行證の傳は公的旅行者が、傳舍利用のほかに身分證明書としても使用するため、歸還まで携帶する必要があるので、里耶出土の傳の封緘簡牘は、遷陵縣の公的旅行者が歸還後不要になったとして廢棄したものと考えられる。 ちなみに、「傳」一字の簡牘は居延漢簡(257.13)にも見えており、大庭脩の説明によれば、通行證明書の封緘に用いられ、「傳」の一字が中に通行證が入っていることを明示するものだとする。(大庭脩『秦漢法制史硏究』606-607頁)
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