語釈(その他):讂書

讂書,讂とは告示などを通じて探し求める意、書は文書を指し、指名手配に用いられる文書をいう。既発表の里耶秦簡には完形の讂書は確認できないが、諸断片では、被指名者を特定する情報として本籍地・姓名・肌色・人相・身長・年齢の個人情報が記され、生死や居所が不明と書き添えられることが多い。嶽麓秦簡(伍)によって伝えられる秦律には、従人の手配を対象とした法令が含まれており、明記すべき事項としては姓名・年齡・身長・顏色(肌色?)・傷の有無が定められている。

讂書の多くは二行書きの02型簡(両行)に書写され、一枚の簡牘で完結するようであるが、被指名者が複数人にわたる場合には、冊書等の形に纏められ名簿を構成することも見受けられる。丹という人物の娘に関わる簡8-2098+8-2150と8-1070および李広の関係者の身分情報を記した簡9-0337+9-0142とJ1⑫0140がその例である。

讂書の作成に当たり、基礎史料としては身分情報や違法行為を記した爰書が用いられ、頭髪・髭および官給品とみられる着用衣類と持ち物に関する情報も下記添えられているようである。簡8-0537+8-0439+8-0519+8-1899記載の爰書がその一例と考えられる。

讂書を取り扱う部署としては遷陵県には讂曹が置かれており、簡9-2326は、讂曹が讂書を保管していた笥(はこ)に付けられた表示札と考えられる。簡J1⑫851に見える「主讂」とは讂書を取り扱う部署を指す総称であり、簡J1⑫851は遷陵県における讂書受診の証拠と言える。

讂書の使用方法については、讂や讂求・讂捕・讂問などを参照。