語釈(身分呼称):官徒
官徒、隸臣妾および城旦舂を中心とした縣官の勞働要員。(石原遼平「秦漢時代の『徭』」(東洋文化第99號、2019年)65頁。なお縣字は陶安による補記)。嶽麓秦簡(肆)簡153には
151 ●䌛(徭)律曰:補繕邑院、除田道橋、穿汲〈波(陂)〉池、漸(塹)奴苑,皆縣黔首利殹(也),自不更以下及都官及諸除有爲
152 殹(也),及八更,其睆老而皆不直更者,皆爲之,冗宦及冗官者,勿與。除郵道、橋、駝(馳)道,行外者,令從戸、
153 官徒爲之,勿以爲䌛(徭)。
●徭律に曰う。邑院を補繕し、田が道・橋を除し、陂池を穿ち、奴苑を塹るは、皆なの縣黔首が利なり。不更より以下及び都官及び諸々の除せられて爲す有る(もの)、及び八更(八もて更するもの)、其れ睆老にして皆(ことどお)く更に直(あ)たらざる者は、皆な之れを爲す。冗宦する(もの)及び官に冗する者は、與(あずか)ることなかれ。郵が道・橋・馳道を除し外に行く者は、從戸・官徒に令して之れを爲さしめ、以て徭と爲すなかれ。
というように、徭役とは區別して、使役できる勞働要員として、官徒が從戸と竝んで擧げられる。また、同簡148-150には、
148 (前略)給邑中事,傳送委輸,先
149 悉縣官車牛及徒給之,其急不可留,乃興䌛(徭)如律;不先悉縣官車牛徒,而興黔首及其車牛,以發
150 䌛(徭)力足以均而弗均論之。
邑中が事に給し、傳送・委輸するは、先に悉く縣官が車・牛及び徒を之れに給す。其れ急にして留むべからざるは、乃ち徭を興すこと律が如くす。先に縣官が車・牛・徒を悉(つ)くさず、黔首及び其の車牛を興さば、徭を發するに、力、以て均(なら)らすに足るに均らさざるを以て之れを論ず。
というように、官の徒が、車・牛といった縣有の生産道具と竝列して言及されることから、縣官によって管理される縣有の勞働力を指すことが讀み取れる。
(なお、「吏徒」との違いに留意すべし。訳注稿xlsx8-1514を参照)