語釈(官職名):假

假:官職の代行形態の一種。『史記』項羽本紀において、

乃相與共立羽爲假上將軍。

乃ち相與に共に羽を立てて假上將軍と爲す。

というのに對し、張守節『史記正義』は、

未得懷王命也,假,攝也。

未だ懷王が命を得ざればなり。假は攝(か)ぬるなり。

と注釋する。里耶秦簡に見える假官は、本簡と簡8-0459のように、キノコの採集に行く「(將?)求菌假倉」のほか、上計団を率いる「將計假丞」(8-0108+0002)、猿の捕獲チームを率いる「將捕爰假倉」(8-1559)、派遣されて覆獄を担当する「丞相叚史」(J1⑯0886)というように、特定の任務を帯びている例が目立つ。本務者がいなく、一種の留守としてその職務全体を代行する「守」に対して、「假」は、本務者の有無と関わらず、特定の任務のために、真官の権限の一部を仮に与えてその範囲内で代行させることをいうと考えられる。

睡虎地秦簡「秦律十八種」189簡に記載された内史雑には、

官嗇夫免〼其官亟置嗇夫。過二月弗置嗇夫,令、丞爲不從令。 内史雜

官嗇夫免ぜられ……其の官には亟やかに嗇夫を置け。二月を過ぐるも嗇夫を置かざれば、令・丞の令に從わざると為す。 内史雜

とあり、二か月を越えて官嗇夫を置かない場合は令・丞の法令違反とされた。つまり、官嗇夫の任命権は県の令・丞にあったことになる。真官の任命権がある以上、代行である假官についても同様であったに相違ない。