講演の概要:
人類は野生植物の栽培を始め、野生動物の飼育を始めることによって、その生活が劇的に変化しました。しかし、どのような種をどのような過程を経て栽培、あるいは飼育するに至ったのかを探ることは容易ではありません。野生動物を家畜化するにあたり、動物側の理由(生物学的な理由)と同時に、人の側の理由があったはずです。野生動物の家畜化における人の側の理由を考察するに際し、人類が家畜をどのように認識していたかを探ることは大きな意義があるものと思います。また、こうした人類の家畜化された動物及びその野生種に対する認識を、言語データを使って探る方法を考えてみたいと思います。言語データは非常に豊富であり、また、人為的に変更を加えることは基本的に不可能です。「牛」について、英語では生きているものと食卓に上ったものは違うことばを使います。部位によってたくさんの名称があります。日本語の場合とはずいぶん違いますが、当該動物と当該民族(集団)との関連性の違いを示しているということができるでしょう。本発表では鶏を中心にいくつかの家畜を取り上げ、言語データを使って人との関係についてどのようなことが言えるか検討してみます。
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