本プ ロジェクトでは、フランス社会学・民族学の基礎をきずいたマルセル・モースの業績を、書評・時事論説・講演録・未定稿なども含めた、そのほぼ全作品について横断的に吟味しながら、個人と国家のはざまに位置するものとして構想された「社会societe」とは何であり、また何でなかったのかを、今日の視点か
ら再検討する作業がめざされている。
と りわけ、学問形成期のサンスクリット研究から20世紀転換期の供犠論、呪術論をへて、やがて『贈与論』(1925年)で表明されることになる「交換」の民族学的モティーフが、同じ両大戦間期(=第三インターナショナル/コミンテルン期)に発表された一連の協同組合論、ボリシェヴィズム論、暴力論、ナシオン論などと、また他方における個体論、身体論、人格論、技術論などと、「社会」学的次元でいかなる理論的連関により繋がれていたかが、共同研究の中心的論点となる。
『民族誌学の手引き』の著者は、法・道徳・貨幣・革命のかなたに、どのような凝集力をそなえた「社会」の姿を夢みていたのか。それはまた、今日のアジア・アフリカ諸国における「社会」の動態と、なんらかの接点をもちうる夢だったのか。
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