この共同研究プロジェクトは、世界総人口の2割ほどを占めるとされる世界各地のムスリム(イスラームの信者)の生活世界の実態を民族誌的アプローチから探るとともに、比較を通してそれらに見られる共通性・普遍性と地域ごとの特殊性の双方を明らかにすることを主な目的としています。対象とする地域は、これまでのイスラーム研究において中心とみなされてきた中東だけでなく、サハラ以南アフリカ、南アジア、中央アジア、東南アジア、東アジアを含み、さらに欧米などのムスリム・マイノリティ社会も視野に入れています。そして、衣食住をはじめとする、ムスリムの日常生活に見られる些細な社会的・文化的現象の検討を出発点として、それから国家や国際レベルにおける政治・経済的大状況を考察するというボトムアップ的視点、すなわちフィールドの現実を重視する社会・文化人類学や地域研究的な方法を重視しています。それとともに、イスラーム学の専門家にも参加していただき、 ローカルな場における民族誌的事実とより普遍的なイスラームの法学・神学的解釈との異同を検討することも目指しています。また、今日のムスリム社会が、一 方ではイスラーム復興のさまざまな兆候を見せているとともに、他方では近代化・世俗化・グローバル化などの影響を強く受けていることを考慮して、その現代 的変容のあり方にも注目しつつ研究を進めます。
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