展示品 A会場
平面図に戻る
次を見る
「チューノム」から「チュークオックグー」へ
■チューノム(消滅)・チュークオックグー(存続)/ベトナム語
南

パネル画像
▲展示パネル
 クリックで拡大します
 ベトナムは、漢字と漢文を歴史的に長く使用していました。その一方、自らの言語を表記するために、漢字を改造して生み出したのがチューノム(字喃)です。
  「チュー(字)」はベトナム語の「文字」に当たりますが、「ノム(喃)」の語源には2つの説があります。ベトナム人は自国のことを「南国」と呼ぶ習慣があるので、漢字「南」に対応するベトナム漢字音ナムに由来する、というものと、ベトナム語のノム「話し言葉の」「俗の」にさかのぼるというものです。それぞれ「ベトナムの文字」「話し言葉の文字」の意味になり、どちらの語源で解釈しても文字の性格をとらえています。
 チューノムはベトナム語専用の文字体系でしたが、他の諸民族の疑似漢字と異なり、最後まで公用文字にはなりませんでした。チューノムの基本的な性格は非常に漢字に似ています。ベトナム語を表記しはじめた当初は、漢字をいわば「万葉仮名」的につかいましたが、次第に漢字の構成要素や独自の要素を組み合わせた派生字が増えました。チューノムは字形的には「漢字をそのまま使った文字」と「新たに派生した文字」に分かれます。前者には漢字の「意味を借りたもの」「音を借りたもの」があります。後者には「表意要素と表音要素を組み合わせたもの」「表音要素同士を組み合わせたもの」などがあり、新しい文字をつくる方法には、さまざまなものがあります。
 ベトナム人がいつ頃から漢字を使いはじめ、またチューノムを利用しはじめたのかを特定するのは難しい問題ですが、チューノムが使用されはじめたのは11世紀ごろだといわれます。そして20世紀初頭、チュークオックグー(字国語)という、ローマ字を改造した正書法が確立して、チューノムは姿を消しました。


借りたもの