概要
 展示品とパネルは、「漢字エリア」を中心に「東・西・南・北」ブロックに分けられています。ではごく大まかに、漢字を中心とした「東西南北」の文字の状況を説明しましょう。

東では朝鮮半島と日本に漢字が流入しました。朝鮮では漢字・漢文を受け入れましたが、現在ではハングルという固有の文字が中心ですし、日本では漢字を元にした「ひらがな・カタカナ」が漢字と併用されています。日本では高度な漢字・かな活字印刷が行なわれました。

西では、ソグド文字から古代ウイグル文字が生まれ、モンゴル文字などへ発展していきます。また、インド起源のチベット文字といった民族文字が誕生しました。11世紀初頭、タングート人は、西夏文字という疑似漢字を創製しました。現在の新ウイグル語はアラビア文字で記されています。また満州文字の末裔シボ文字がシボ族によって継承されています。

南は、漢字を公的に受け入れたベトナムなどのエリア、漢字字形を一部利用するものの、民族独自の文字を継承する雲南省などのエリアに分かれます。ベトナムでは漢字が公用でしたが、チューノムという派生漢字が創り出されたあと、現在はラテン文字を改良したチューコックグーが使用されます。中国南部はトンパ文字、ロロ文字といったユニークな民族文字の宝庫です。

北では、契丹・女真文字のように漢字に影響された疑似漢字、チベット文字をモンゴル語に導入したパスパ文字が生まれた後、ウイグル文字から派生したモンゴル文字、さらに満洲文字が広まりました。モンゴル国ではキリル文字という、アルファベット表記が行なわれています。

 この企画展は、従来の、漢字の歴史的変遷の展示や、名筆の展覧会とは少々異なり、漢字と巡り会った様々な文化を紹介することを目的としています。それでは、漢字が巡ってきた東アジアの世界を一緒に旅しましょう。