ハルク門近くのカイロの通り


4-6 (no. 21) ハルク門近くのカイロの通り
a street in cairo near the bab el-khark
リトグラフ、ラグ紙


 ハルク門はズワイラ門の西、ファーティマ朝カイロの南西端あたりに位置していた門である。その近くの緩やかなカーブをロバに乗った黒ずくめの女性が隊列を組んでゆっくりと進んでいく。先導するのは宦官であろうか。イスラーム世界において宦官は珍しいものではなく、奴隷制が廃止される19世紀後半まで宮廷などで活躍していた。一方、手前に描かれた代書屋は、文字の書けない客のために葦ペンを走らせるのが生業。1952年に政権を奪取した自由将校団が教育制度を変えるまでエジプト人の大半は文盲だったため、代書屋はたいへん重宝された。現在でも識字率100%とはいかないが、読み書きのできる世代が育ち、代書屋も流行らなくなったようである。