バイナル・カスラインとスルタン・カラーウーン墓廟のミナレット


4-5 (no. 20) バイナル・カスラインとスルタン・カラーウーン墓廟のミナレット
beyn-el-kasreyn with the minaret of the tomb of sultan kaloon
リトグラフ、ラグ紙


 イスラーム復興の気運が高まる今日でも、カイロで目以外のすべてを隠した服装のエジプト人女性と出会うことはめったにない。楽団を交えた婚礼の列は式場のホテルでしばしば目にするが、一歩外に出れば、婚礼パレードの主役は警笛を鳴らして疾走する自動車の列なのである。十字軍戦争を終結に導いたマムルーク朝の英雄カラーウーンの墓廟をバックに、画家がここで描いた婚礼行列は、そうした意味で貴重な民俗の記録となってしまった。今も昔も、物見高いカイロっ子は行列の周りに黒山の人だかりを作る。あわてて売り物の果物をひっくり返してしまった若者にすら、誰も気づきはしない。賑やかな音楽は人々を引きつける舞台装置なのである。