『コーラン』にはまったく触れられていないものの、割礼はムスリム男子にとって重大な通過儀礼である。それゆえ、割礼の前後には盛大な祝いが開かれる。さらに、一昔前までは町々を練り歩く祝いの行列が人々の生活にアクセントを与えていた。先頭の男が持っている箱は「スンドゥーク・アッドゥンヤー（世界の箱）」と呼ばれる走馬灯の一種。手術の恐怖に泣き叫ぶ子供をなだめすかすための仕掛けであろうか。楽団まで動員した豪華なパレードの主催者は身分の高い一族でなければ、数家族の合同であるに違いない。いずれにしても、主役の子供が見えないのが気にかかる。ちなみに、現在でもカイロの割礼は昔ながらに床屋などで行われている。