フィール池


2-6 (no. 11) フィール池
birket el-feel
リトグラフ、ラグ紙


 ファーティマ朝のカイロの南に位置するフィール池は、長くカイロのランドマークであり、運河によってナイルと結ばれていた。トゥールーン朝の滅亡とともに焦土と化したカターイゥを含め、市街化の遅れたこの地域の発展は、13世紀以降為政者の居城となった丘の上の大城塞と密接に関連している。大城塞に出勤する政治家や軍人にとって、城塞に近い池の周辺は風光明媚な一等地であり、豪華な邸宅が立ち並ぶ高級住宅地が出現したのであった。池の後方に描かれた邸宅は17世紀頃の建築ブームに乗って建てられたものであろうか。水に浮かぶあずまやが美しい。池は現在では埋め立てられ、周辺は低所得層の居住区と化して地名だけが残る。