ギーザ


2-1 (No. 6) ギーザ
EL GEEZEH
リトグラフ、ラグ紙


 エジプトは「ナイルの賜物」である。毎年定期的に氾濫し、あとに肥沃な土を残していくナイルの恵みがなかったら、古代エジプトの栄華もカイロの繁栄もあり得なかったに違いない。同時にナイルは、エジプト各地を結ぶ交通の大動脈でもあった。一握りのオアシスを除けば、ナイルの周辺だけが人の居住を許す空間だったからである。そして「ナイルの水を飲む者はナイルに帰る」。ナイルはエジプト人の心の故郷でもある。カイロの対岸、ピラミッドで有名なギーザ地区の名を冠された1枚がギーザのどのあたりを描いたものなのか、水辺の風景が変わってしまった今日では知るよしもないが、左手前に描かれた漁師たちの営みは今も変わらず続いている。