野口忠司氏所蔵
C01
『アナーガタ・ワンサヤ』
シンハラ文字、シンハラ語/サンスクリット語

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未来仏である弥勒(マイトレーヤ)の予言の形でスリランカの仏教史を説く書物です。直訳すると「未来の歴史」というタイトルになります。『メテェー・ブトゥ・シリタ』とも呼ばれます。

スリランカの仏教史は決して平坦なものではなく、上座部仏教の厳しい戒律からの離反によって一度は仏教教団そのものが維持できなくなって、かつて教えを伝えたビルマからふたたび僧を呼んで、教団を復興したこともあります。そうした歴史における正統と異端の分別のために弥勒の予言の形でそれまでの仏教教団の歴史を総括しようとする史書です。

現実には過去の歴史を、過去において神や聖人が予言したという形で記述する方法は、インドのプラーナと呼ばれるジャンルの書物でもよく見られる手法です。

クルネーガラ時代(西暦1293−1347)最も隆盛を極めたパラークラマバーフIV世王(在位1303〜1333)の支援を受けスリー・パラークラマバーフ・ウィルガンムラ僧が中心となり1325年から1333年にかけて纏め上げたとされています。

(野口 忠司)