これは、カンナダ語の会計文書です。
カンナダ語は、現在カルナータカ州の公用語となっています。カルナータカ州を
はじめとする南インドでは、18世紀までの数世紀の間、各種の会計文書・収支台
帳がカディタと呼ばれていました。カディタとは本来は、布製の記録媒体のこと
を言います。炭を塗布した黒色の布を折り重ねて本状にし、カンナダ語・テルグ
語でバラパ、タミル語でパッラパムと呼ばれる白色のせっけん石の一種で書き込
みます。
18世紀までのカンナダ語会計文書の場合、速く書くことができるように文字と文
字とがつながった特殊な文字・書体を使用することが一般的でした。しかし、こ
の会計文書では通常の各文字が独立したカンナダ文字が用いられています。また、
数字も通常のカンナダ数字で表記されています。
この会計文書には、毎年の収支計算が数年間に渡って記録されています。支出欄
には、「兵士(あるいは見張り人)」の項目が見られ、複数の人名と彼らに支払
われた手当と思われる金額が列記されていますが、誰が何の目的のために作成し
た収支台帳なのかはよくわかりません。 (太田 信宏)
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