国立民族学博物館所藏「中西コレクション」
B25
19世紀サウラーシュトラ文字の写本
サウラーシュトラ文字、サウラーシュトラ語

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珍しいサウラーシュトラ文字が書かれている貝葉の写本です。

4葉の写本ですが、サウラーシュトラ文字が書かれているのは、第4葉の中ほどの一部だけです。サウラーシュトラ人はサウラーシュトラ地方(ほぼ現在のグジャラート州にあたる)からタミル・ナード(特に南部)を中心とする地域に数世紀前に移住した人々で、主に繊維産業などに従事しながら独自のコミュニティーを維持しています。

彼らの話すサウラーシュトラ語は、インド・アーリア系の語彙を維持しながら文法体系などがドラヴィダ語化している興味深い言語です。インドにおいては、独自の文字を持っているということが、その民族の文化的地位の高さを示すかのように思われるので、独自の文字を持っていなかったサウラーシュトラの人々は新たな文字を作り出しました。

この写本の文字は、おそらく19世紀半ばに作られたもので、文字の組みたてはテルグ文字にちかいですが、文字そのものはテルグ文字と関係なく、作者も不明です。

書かれている内容は、ヴェンカタスーリという人の詩です。

書き込まれたもとの貝葉はテルグ語で書かれた夜明けと日没に唱える讚歌で、サウラーシュトラ文字の部分とは上下が逆になっています。

サウラーシュトラ文字についての詳しい解説は「インド系文字の仲間たち」の方を見てください。

(高島 淳)