国立民族学博物館所藏「中西コレクション」
B10
革表紙のチベット常用経典
チベット文字、チベット語

詳細を見る

この黒い革表紙の古びた本は、貝葉型の横に細長いチベット仏教経典を見慣れた者にとっては、変わった出で立ちをしていますが、開いてみれば立派な手書きのチベット文字の並ぶ常用経典集です。常用経典は、様々な経典の中から重要な部分を集めてまとめたもので、日々の読経用に使われるものです。この本は二枚の紙を接ぎ合わせてページが作られていますが、相当の年代物のようで、ぼろぼろになってはがれかかっています。よく見ると紙と紙を糸で縫い合わせて補修した跡が見え、大切に受け継がれてきたものであることがわかります。

ここで用いられている文字はチベット文字ですが、B29の碑文に見られるような角張った書体(有頭体、ウチェン)とは異なり、手書き用の無頭体(ウメー)です。この書体の発展には諸説ありますが、はっきりしたことは分かっていません。有頭体は大蔵経の木版印刷ではずっと伝統的に用いられてきましたし、現在でも本や新聞、雑誌などの活字媒体ではこの書体が用いられます。一方、手紙やメモなどの手書き文書では無頭体がよく用いられます。無頭体にも様々なスタイルがあり、たいへん流麗な美しいものもあります。

「詳細を見る」というボタンを押していただくといくつかの書体をご覧いただくことができます。

(星 泉)