国立民族学博物館所藏「中西コレクション」
B01
マンヤン文字刻印の竹筒
フィリピン、マンヤン文字(北部)

詳細を見る

フィリピン、ミンドロ島内陸部高地北部に住む、北部ブビット族の文字が刻まれている竹筒です。刻印されているのは、日本語の五十音図にあたるような、北部マンヤン文字の一覧です。この竹は、見たところ、特に実用品や装飾品としての用途は持っていないようです。この地ではもしかすると、身近にある竹に文字を刻んで、子供に読み書きを教えるということが行われていたのでしょうか。あるいは外部の人に固有の文字を紹介するために刻まれたものなのかもしれません。

ここに見られる文字の配列順は

母音(a e/i o/u),b, k, d, g, h, l, m, n, ng, p, r, s, t, w, y

と、原則としてアルファベット順になっています。(k音を表す文字がこの位置にあるのは、スペイン語などの影響で、k音=アルファベットのcととらえられているからでしょう。)この配列順からみる限り、マンヤン文字は、「いろは」のような独自の配列も、「あかさたな」のようなインド系文字特有の配列も残していないようです。

マンヤン文字は、北部の文字と南部の文字に分類されます。現在でも比較的文字が広く用いられている南部とは対照的に、この竹に刻印されている北部の文字は現在ではほとんど用いられていないそうです。

(塩原 朝子)