いま、私たちアジア・アフリカ言語文化研究所は、文字に関するさまざまな研究に意欲的にとりくんでいます。

 次世代のネットワーク社会にむけた文字のデジタル化はもちろんのこと、過去から私たちがゆずりうけた大切な財産である文字そのものにも注目し、いまだ知られざるその歴史やルーツの解明など、「文字は、どこからやってきて、どこへ行こうとしているのか」という文字の過去と未来とに同時に目をむけたスケールの大きな研究に力をそそいでいます。

 そうした私たちの研究の成果を広く知っていただくための試みとして、国立民族学博物館との共催による文字の展覧会「アジア文字曼陀羅〜インド系文字の旅」を企画しました。

 「文字の宝庫」といわれるアジアは、漢字、インド系文字、アラビア系文字など、それぞれにユニークな特徴をもった文字たちが互いに、おしあいへしあい、交じりあい、時にまた、ぶつかりあい、せめぎあい、わかれあいしながら共生している文字の共同体です。そうした文字たちのありさまは、どこか「曼陀羅」を思わせるところがあり、本展のタイトルはそこからつけられました。

 今回はこうした文字のうち、日本では比較的なじみのうすいインド系文字とその旅の世界にみなさまをお招きしたいと考えています。

 インド系文字の最大のおもしろさは、その驚くべきひろがりかたにあります。それは単にインド系の文字が非常にひろい地域の非常におおくの人々に使われているというだけでなく、古代から現代にいたる長く遠い時間と空間の中で、インド系の文字が転々とその身を移し、そのつど変幻自在にすがたを変えてきたこと、そして、またある時は、他の文字のなかに身を宿しながら爆発的に子孫や仲間たちを増やしてきたこと、そのたくましい繁殖力としぶとい生命力、そこにインド系文字の最大の魅力があります。

 今回、私たちは、こうしたインド系文字の伝播(でんぱ)を「旅」に見立て、この旅にみなさまをお連れしたいと考え、ふたつのコースをご用意いたしました。

 文献資料室では、私どもの研究所が収集した所蔵品と国立民族学博物館所蔵の「中西コレクション」の中から選りすぐりの品を展示しております。資料展示室は、インド系文字により親しんでいただくための空間です。ここには、インド系の文字をさまざまな角度から理解するためのパネルをはじめ、年代物のタイプライターや活字、当展特製の「識字力検査表」、また「グラマニメーション」や「モジモジフォン」などのコーナーを設けました。さらに本展に関するホームページもご用意しておりますので、文献資料室もしくは本展示室備えつけのコンピュータにて御覧下さい。

 この展覧会は、私たちアジア・アフリカ言語文化研究所にとって、はじめての展覧会です。その意味でこの展覧会は、私どもにとって未知なる冒険の旅でもあるのです。そのため不案内なところも多々あるかもしれませんが、どうかおつきあいいただけましたら幸いです。

 では、どうぞごゆっくり御観覧ください。



東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所所長
                   宮崎 恒二

アジア文字曼陀羅〜インド系文字の旅実行委員長
                   町田 和彦





お問い合わせ先:
〒183-8534 東京都府中市朝日町3-11-1
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
「アジア文字曼陀羅〜インド系文字の旅」実行委員会
tel: 042-330-5634
e-mail: i-moji@aa.tufs.ac.jp





[アジア文字曼陀羅〜インド系文字の旅]

[主催]
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所/国立民族学博物館

[協力]
株式会社NTTドコモ

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実行委員会
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[会長]
宮崎恒二(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 所長)
石毛直道(国立民族学博物館 館長)

[実行委員長]
町田和彦(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 以下、AA研)

[実行委員]
ペーリ・バースカララーオ(AA研) 高島淳(AA研) 峰岸真琴(AA研)
 星泉(AA研) 澤田英夫(AA研) 塩原朝子(AA研) 小田昌教(AA研)
 児玉茂昭(AA研) 西尾哲夫(国立民族学博物館) 長野泰彦(国立民族学博物館)

[広報]
東京外国語大学企画広報室

[スタッフ]
笠井洋子 片山まび 藤井美佳 長谷川玲子 前田珠緒 松本裕子

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解説執筆
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町田和彦 高島淳 峰岸真琴 星泉 澤田英夫 塩原朝子 小田昌教
ペーリ・バースカララーオ 新谷忠彦(AA研) 中見立夫(AA研) 太田信宏(AA研) 野口忠司(シンハラ語辞典編纂室・スメラ日本文化研究所) 岡口典雄(拓殖大学) 山部順治(ノートルダム清心女子大学) 若狭基道(東京大学大学院生) 
鈴木玲子(東京外国語大学外国語学部) 上田広美(東京外国語大学外国語学部)
 加藤昌彦(大阪外国語大学) 児玉望(熊本大学) 内藤雅雄(法政大学)
 丹羽京子(東海大学) 山下博司(東北大学)

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美術・デザイン
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[アートディレクター]
ヲダ・マサノリ

[チーフデザイナー]
小田昌教

[プロダクションアーティスト]
鎌田原子(エクセリードテクノロジー) 嶋田麿嗣(アドプラネット)

[WEBデザイン]
鎌田原子

[会場展示]
小田昌教 鐘ヶ江亜希子(エクセリードテクノロジー)

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会場ナビゲーター
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村上和子 相子明美

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 謝 辞
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本展の実現にあたり、ご支援、ご協力をいただいた多くの方々に
実行委員会一同、感謝申し上げます。
(敬称略、順不同)

[情報提供]
高橋孝信(東京大学) 内田紀彦(元・薗田学園女子大学)
 Arlo Griffiths(ライデン大学) ソーティンナイン 
岡野賢二(東京外国語大学大学院生) ペルマドルジェ(AA研研究生)

[資料提供]
東京外国語大学外国語学部カンボジア語専攻 岡田知子(東京外国語大学外国語学部)
 野口忠司 鈴木玲子 石井溥(AA研) 芝野耕司(AA研) 太田信宏
 Werner Friedhelm Menski(AA研) 西井凉子(AA研) ムンシ(AA研)
 千葉文博(有限会社ツクラカン)

[モジモジフォン音声データ作成協力]
パン・サクダ(東京外国語大学留学生/カンボジア語)
 ローラ・アルナ(サオラ株式会社/ヒンディー語)
 ザトゥル・リンポチェ(ダライ・ラマ法王日本代表部事務所/ラサ・チベット語)
 ペルマドルジェ(AA研研究生/アムド・チベット語)
 福田菜穂子(日本語)

[展示ケース貸与協力]
東京外国語大学附属図書館

[ビルボードアート制作協力]
千葉文博

[資料転載許可]
白水社 中西印刷株式会社

[広告掲示協力]
西武鉄道株式会社

[本展のために様々な注文に応えてくれた下記の各社に感謝いたします。]
(順不同)
有限会社エクセリードテクノロジー 株式会社アドプラネット 
高橋情報システム株式会社 朝日出版社 東京リスマチック 西尾レントオール株式会社
 コクヨ ITOKI 幸和商事 美津野商事 三多摩総合事務機器



本展は、下記の組織およびプロジェクトの研究成果の一部です。アジア・アフリカ言語文化研究所付属情報資源利用研究センター(IRC) (1997-2006) /文部科学省COE拠点形成プログラム『アジア書字コーパスに基づく文字情報学の創成(GICAS)』(2001-2005)/新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)産業技術研究事業費助成金『多言語処理技術の基盤整備』(2000-2002) 。今回の展示等に用いたフォントの一部は、文部科学省科学研究費補助金「古典学のための多言語処理システムの構築」(特定領域「古典学の再構築」)の成果として開発されました。



他にもたくさんの方々からご支援をいただきました。ここに記して御礼申し上げます。