趣 旨

近年、世界規模のグローバル化やいわゆるイスラーム復興のトランスナショナルな高まりに応じて、東南アジアにおいても、イスラーム復興や、いわゆる政治的イスラーム(political Islam)ないしイスラーム主義(Islamism)の潮流に関心が高まっています。とりわけアジア経済危機以降、イスラームの政治や経済などへの影響力の増大は否定できない顕著な現象となり、また近年のいわゆる「対テロ戦争」の遂行やその後の東南アジアにおける爆弾テロ事件の続発といった状況下で、従来はローカルなアジェンダをめぐって展開されてきた南部フィリピンやタイの分離主義運動などにもアルカイダやジュマアイスラミーヤなど中東にも繋がる国際テロ組織に影響を受けた組織や勢力が浸透しつつあるという指摘がメディア等を中心になされています。しかしながら中東アラブ世界など東南アジア域外のイスラームが東南アジア域内へいかに影響をおよぼしているのかを含めて、東南アジアにおけるイスラームの公共領域への影響の実態等についての包括的な学術研究はまだ端緒についたばかりと言っても過言ではありません。本ISEAプロジェクトでは中東アラブ世界を専門とする複数の研究者をもコアメンバーに加えることで、東南アジアにおけるイスラームがどの程度までアラブ中東世界など域外からの影響を受けながら固有のアイデンティティーを形成してきたのか?あるいは域外と域内におけるイスラームの伝統や実践の関係性のダイナミクスはいかなるものであるのか?さらにはその動態が政治や経済、そして紛争や平和構築といった東南アジアの公共的領域に及ぼす影響はどのようなものであるか?といったような問題についても基礎的な知見を提供することを目的としています。

[English]