AA研要覧 2012
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26本研究所は、1964(昭和39)年の創設以来、アジア・アフリカ諸地域の言語・文化の研究にとって重要資料を収集してきました。現在、資料総数は、図書11万冊、雑誌約1,220タイトル、マイクロフィルム1万余リール、マイクロフィッシュ3千余に達し、ほかに古文書、地図、写真、またビデオやCD‐ROM等も所蔵しています。AA研のみがもつ貴重な資料も少なくありません。たとえば、カンボジア語版南伝大蔵経は、戦乱により現地では散逸しましたが、本研究所所蔵本をもとに複製版がつくられ、カンボジアの文化教育機関や寺院に寄贈されて、彼の地の文化復興に貢献しました。また、浅井恵倫旧蔵資料(台湾先住民関係の土地契約文書、動画、写真、語彙集、用例集、フィールドノート等)は、研究所ウェブサイトで公開されています。このほかにも、オスマン語劇場ポスター、ナポレオン「エジプト誌」(第2版)、19世紀「カイロ石版画集」コレクション、19世研究資源音声学実験室研究資源言語音を分析する本研究所の音声学実験室は、言語音の基礎研究に関する分析や実験を行うために必要不可欠な設備を備えています。コンピュータスピーチラボ(CSL4500)は、アナログ音声信号を高品質でコンピュータに取り込み、スペクトログラム・フォルマント軌跡・LPC(線形予測符号化)周波数反応・FFT(高速フーリエ変換)パワースペクトル・LTA(長期平均)パワースペクトル・ケプストラム分析・ピッチ曲線分析・エネルギー曲線分析など、さまざまなタイプの分析を行うことができます。波形編集・チャンネル編集・時間編集・振幅編集などの基本的編集機能や、記録・再生機能も有しています。さらに、リアルタイムなスペクトログラフ分析・ピッチ分析を行うための専用ソフトウェアも利用可能です。この機器は、言語学的観点から見た発話音の様々な側面の分析を行うのに適切なものです。音声学実験室に備えられた音声・言語ライブラリには、所員をはじめとする研究者がフィールド調査を通じて収集した言語音・民話・民族音楽など貴重な録音資料が保管されています。これらフィールド調査の成果である録音ディスク・テープの一部および世界諸言語の録音ディスク・テープは借り出すことができます。実験室にある分析機器・録音機器・メディア変換用機器などのハードウェアとソフトウェアには使用説明書が備えられ、利用者の便を図っています。音声学実験室内には、防音スタジオが用意されています。スタジオに備えつけられた高性能のソリッドステートデジタル録音機を使用して、話者の発話サンプルの高品位な録音を行い、実験室の機器を用いてそれを分析することができます。http://www.aa.tufs.ac.jp/ja/projects/phonetic-lab/文献資料コレクション書物を集める紀末からのイランの主要新聞65種、19世紀末に創刊されたベンガル語文芸雑誌のバックナンバー、中国清代の製糖法を伝える画集、清代台湾民俗図、清代モンゴル語仏典、ロシア帝国で出版されたモンゴル語聖書、満洲国駐タイ公使館文書、日本の植民地官僚で京城帝国大学総長も務めた篠田治策の文書など、貴重な資料が所蔵されています。三浦周行旧蔵品を含む朝鮮王朝古文書類コレクションや、清代公文書コレクションは、現在も継続して収集を続けています。アジア・アフリカ研究における先覚者の個人文庫としては、山本謙吾(満洲語研究)、小林高四郎(モンゴル史研究)、前嶋信次(イスラーム研究)、王育徳(台湾語・文化研究)諸氏の蔵書があります。なお、故大塚和夫氏の人類学と中東・イスラーム関係の蔵書も大塚文庫としてすでに一部が公開されています。http://www.aa.tufs.ac.jp/ja/projects/library/音声学実験室文献資料コレクション

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