18共同利用・共同研究課題共同研究【移民/難民のシティズンシップ—国家からの包摂と排除をめぐる制度と実践—】2011〜2013年度 代表者:錦田 愛子 所員3/共同研究員11国民国家を構成単位とする近代以降の世界において、移民、難民の存在は、滞在国における国籍の付与、一定限度における市民権の容認、人道的見地からの人権保障などの対象として、これまで主に論じられてきた。しかし超国家レベルの政体や交渉枠組みの拡大、また越境移動の活発化は、こうした人の動きを各国単位で対処されるべき個別の派生要素と捉えるだけでは不十分であることを示している。本課題では、国民という資格と、それに付随するものと考えられてきたシティズンシップを、切り離して考えることにより、現在実際に展開している複合的な市民、居住のあり方を解き明かしていく。国籍なきシティズンシップは可能か、実際の取得事例や当該国での位置づけ、シティズンシップとナショナル・アイデンティティとの関係、移民/難民の包摂と排除をめぐりシティズンシップが及ぼす影響などについて、制度と実践、理論と政策等のさまざまな側面から明らかにしていく。【アフリカ史叙述の方法にかんする研究】2011〜2013年度 代表者:永原 陽子 所員4/共同研究員8本課題では、世界史的な視野にたった新しいアフリカ史叙述の可能性を追究する。従来のアフリカ史叙述の問題点として、無文字社会論の誤解により史料研究が疎かにされてきたこと、サハラ以南と以北(あるいはイスラーム圏)とを切り離す地域区分により大陸全体の歴史的特性をとらえる視点が弱かったこと、植民地化以前の中東/西アジア・インド洋世界、大西洋世界、ヨーロッパ等との歴史的関係が十分にとらえられずにきたこと、植民地時代を基準とした時代区分が行われてきたこと、それらのいずれの問題系においてもジェンダーの視点が軽視されてきたこと、などを挙げることができる。本課題では、これら諸点について検討を加え、文字史料・非文字史料双方を踏まえてアフリカ史像を構築し、アフリカ史と世界史とを有機的に結びつけて理解するために必要な視点と方法を提示することを目指す。【近世イスラーム国家と多元的社会】2011〜2013年度 代表者:近藤 信彰 所員3/共同研究員2016〜18世紀にイスラーム圏を支配したオスマン朝、サファヴィー朝、ムガル朝という大帝国の統治体制と統治技術を前の時代および同時代の諸王朝のそれと比較しつつ、文書史料等の原史料に基づいて比較検討し、その特質を明らかにするのが、本研究課題の目的である。これらの帝国の、「柔らかい専制」などともよばれる統治体制は、多元的社会を巧みに扱い、一定の平和と繁栄をもたらした。現在、文書史料等さまざまな新史料により、これらの国家の統治体制・統治技術に関する研究は飛躍的に進みつつある。しかしながら、個人では新史料や個別研究を把握するのも困難になりつつある。最新の成果に基づきながら、共同で比較研究を行うことで、これらの国家がいかに多元的社会を統治したかを究明し、また、近代以降政治的安定をこれらの地域が失った理由を描き出す。http://meis2.aacore.jp/jr_islamic_states/【東南アジアのイスラームと文化多様性に関する学際的研究】2011〜2013年度 代表者:床呂 郁哉 所員5/共同研究員15本研究の研究目的としては、まず第一に東南アジアの多文化的状況の解明を目指している。より具体的には、文化的な多様性を特徴とする東南アジアにおいて、ムスリムと非ムスリムはどのような関係性を保っているのか、また両者が相互交渉するなかで互いの文化・社会的アイデンティティをどのように構築しているのか、さらには東南アジア域内の多文化状況が政治や経済、司法、教育などの社会的・公共的領域へもつ影響や含意は何か、といった点について実証的に解明することを目指す。
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