AA研要覧 2012
16/51

14共同利用・共同研究課題共同研究【節連結に関する通言語的研究】2010〜2012年度 代表者:渡辺 己 所員6/共同研究員16通言語的な比較対照研究は、単一の節(あるいは単一の節からなる単文)をもとにおこなわれることが多い。しかし、およそ自然言語であれば、実際の運用にあたっては複数の節が連続して現われる。その際の節のつながり方はさまざまで、大きくは等位的か従属的な連結が考えられる。本研究課題では、形態統語的に多様な言語を専門とする国内外の研究者を集めることにより、類型的に異なるタイプの言語がそれぞれにおいてどのように節を連結していくのか考察し、そこに節連結に関する類型的特徴、あるいは通言語的共通点を探るものである。さらに特に近年になり、形態統語的には従属節だと考えられるものが、自然談話のなかで主節なしで単独で現われる現象(「言いさし」、 “insubordination”)が通言語的に研究されるようになった。本研究課題ではこのような現象を含め、言語の実際の運用における節連結を視野におきながら研究を進める。なお、本研究課題は、特別経費「言語ダイナミクス科学研究プロジェクト(LingDy)」の活動の一環とする。【アフリカ諸語の情報構造と言語形式の類型論的研究】2011〜2013年度 代表者:稗田 乃 所員1/共同研究員12アフリカ諸語の情報構造と言語形式の関係を探るための研究組織を形成する。アフリカ諸語の情報構造と言語形式の関係を研究する国際ネットワークの構築をめざす。同時にフンボルト大学において、プロジェクトと同様の「アフリカ諸語における情報構造と言語形式の関係について」の研究プロジェクトを、本プロジェクトとの連携を模索して申請した。近年、注目されている情報構造と言語形式のあいだに存在する関係について、アフリカ諸語の資料から研究する。共同利用・共同研究課題における研究テーマは、以下のものである。アフリカで話されている言語においても、情報構造は、プラハ学派以来の普遍的なものであるか。アフリカ諸語が情報構造を表現するのに、どのような音韻論的、形態論的、統語論的、言語形式を用いているのか。情報構造と言語形式のあいだに存在する関係を類型論的に分析すると、なんらかの類型論的特徴が見つかるか。観察される類型論的特徴に地理的関係が存在するか。以上のような研究テーマにしたがって、研究組織を形成し、国際研究ネットワークの構築を模索する。【インドネシア諸語の記述的研究:その多様性と類似点】2010〜2012年度 代表者:塩原 朝子 所員2/共同研究員15本研究は、「インドネシアの言語」の研究の進展を目的とし、以下の2つの活動を行う。I. 研究者が個別言語の文法記述によって得た知見を集め、インドネシア諸語に関して個別言語間の相違点/類似点を明らかにする。メインテーマは「インドネシアの言語の態」とし、各言語の記述データを元に個別言語の記述手法ならびに、類型論的、比較言語学的事柄について議論する。インドネシアの言語において文法の根幹を成す「態」に注目することによって、付随的に「情報構造の標示」「時制・相・法」なども含め、インドネシア諸語の実相が広い範囲で明らかになることが期待される。なお、参加者の関心に合わせて、短期的な「サブテーマ」も設定する予定である。II. 特別経費「言語ダイナミクス科学研究プロジェクト(LingDy)」と連携し、I の言語記述の前提である言語データの加工と公開に関わる作業を行う。なお、対象言語は、インドネシア国内で話されているオーストロネシア語を中心とするが、系統的特徴を共有するオーストロネシア諸語、地域的特徴を共有するパプア諸語も射程に入れる。http://lingdy.aacore.jp/jp/workshops-studygroups/typology-and-comparative-linguistics-of-indonesian-languages.html【アフリカ諸語のイベントの統合のパターンに関する研究】2012〜2014年度 代表者:河内 一博(防衛大学校) 所員1/共同研究員18このプロジェクトは、アフリカのすべての大語族を網羅し、手話も研究対象に含め、各言語が、空間移動、状態変化、アスペクトなどの意味領域において、イベントの諸要素を統合して形態統語的に表すのにどのような特徴が見られるかという問題を扱う。ほとんどのアフリカの言語は複数の動詞からなる構文を持つが、これらの構文の形態統語的な比較も意味的な比較も体系的になされていない。世界の他の地域の言語とも比較をすることによって、アフリカの各言語・語族が全体的にどのような類型的なタイプに分類されるかを分析し、そしてアフリカの言語に特徴的な現象はあるかどうかを考える。さらに、違う意味領域間の表現パターンの一貫性が各言語・語族内で見られるかどうかを調べる。

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る