AA研要覧 2012
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12基幹研究共同研究共同利用・共同研究拠点である本研究所の中期的研究戦略の柱として、研究所内で自発的に組織された研究班によって展開される共同研究軸です。2010(平成22)年度から3年の計画で以下の課題が基幹研究として設定されました。【言語ダイナミクス科学研究】代表者:中山 俊秀本基幹研究は、①言語多様性の記録のための研究活動(Language Description & Documentation)の活性化と、②言語運用と変化の実際、言語の多様性の実際を踏まえた、ダイナミックな現象・システムとしての言語の研究(Linguistic Dynamics Science)の新展開を目的として組織された。具体的には以下のような活動を通して関連研究を先導していく:・危機言語を中心とした研究未開発言語の臨地研究の推進・記述研究を支える方法論開発と共同研究インフラの整備・言語運用の実際を基盤とした理論研究枠組みの再構築・言語の構造的多様性の幅と深さ、およびその多様性に見られる規則性の研究・言語構造の形成・変化に見られる規則性の探求とそれを形作る動機付けの多面的研究http://lingdy.aacore.jp/【アフリカ文化研究に基づく多元的世界像の探求】代表者:永原 陽子本基幹研究の主たる目的は、グローバル化のなかで大きな変容を迫られているアフリカ諸地域の文化を研究する本研究所の人類学・地域研究(歴史学)研究者が、各自の研究活動に立脚しつつ、共同で多元的世界像の探求・構築を進めることである。アフリカ文化研究の具体的なテーマとしては、たとえば、植民地経験と社会変化、遊牧民/牧畜民と農耕民、人の移動と集団間関係、社会の中の女性/シングル、などがあげられる。メンバーが個々にこのようなテーマで研究をすすめつつ、研究班全体として、公開研究会・セミナーの開催、海外研究者との連携によるシンポジウムの開催などを行い、ウェブサイト等をつうじて研究成果の発信を行う。以上のようなアフリカ文化の基礎研究は、紛争・難民、政治的民主化、社会的差別等、現代アフリカの抱える諸問題の理解と解決に不可欠であるばかりでなく、それらの問題の根本にある近現代世界の構造そのものを問い直し多元的な世界像を構築するのに寄与するものと期待される。http://aaafrica.aacore.jp/【人類学におけるミクローマクロ系の連関】代表者:深澤 秀夫人類学はある時期まで、小規模社会のフィールドワークを活動の中心としてきた。しかし近年、上位の政治社会にあたる国民国家や「近代世界システム」をはじめ、トランスナショナルな規模にまたがる社会・文化圏、さらにはグローバルな地球環境まで視野に入れたマクロ・パースペクティヴへの関心が高まってきた。 また他方では、その対極にむかう方向性として、個々人の身体性を考察の起点とした間身体的実践、ハビトゥス、熟練と暗黙知、アフォーダンス、社会空間など、ミクロ・パースペクティヴを軸とした問題系も同時に浮上しつつある。 こうした国内外の研究動向をまえに、人類学的思考として現在求められているのは、地域別の研究や個別の主題に基づく調査研究をこえた次元での、新たな概念化と理論化の試みである。本基幹研究は、その点で先導的な役割をになうことを目標とする。具体的には、個人と社会、構造とエージェンシーといった二項対立の構図をこえた地点から、身体や実践の主題をめぐるミクロ領域での研究と、広域におよぶ空間移動や生物進化のダイナミクスまで射程に入れたマクロな時間軸に基づく研究との、接合ないし理論構築にかかわる研究成果の呈示を企図するものである。http://www.aa.tufs.ac.jp/kikanjinrui/【中東・イスラーム圏における人間移動と多元的社会編成】代表者:黒木 英充本基幹研究は、中東から東南アジアまでを含めたイスラーム圏において観察される人間移動と、諸宗教宗派・民族の織りなす社会関係とを連関させて、「多であること」の問題性を追究する。多元的社会の生成過程とイスラーム的ネットワーク拡張の動態、移民・難民の政治社会空間に対する影響、個人・集団のアイデンティティ戦略と政治思想の連関、などの問題に取り組む。 本基幹研究は、2005(平成17)〜2009(平成21)年度「中東イスラーム研究教育プロジェクト」の発展形である。ベイルート・コタキナバル両海外拠点を管轄するフィールドサイエンス研究企画センターや、MEIS「中東イスラーム研究拠点」と連携しながら、ベイルート拠点において共同利用・共同研究課題を国際的規模で推進する。また中東☆イスラーム研究/教育セミナー、ベイルート若手研究者報告会や歴史文書セミナーなどを通じて次世代研究者の育成にも当たる。さらに歴史的画像資料などの修復やデジタル化、それを使った研究成果の社会還元を積極的に行う予定である。http://meis2.aacore.jp/基幹研究共同研究の軸

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