AA研要覧 2005
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現代世界は、一方では物心両面における比較的豊かな生活を保証すると同時に、他方では紛争・貧困・地球環境・疫病などきわめて大規模かつ深刻な問題を惹起している。これらの問題は互いに連関しているから、個別的対症療法は効果が限定的であり、新たな問題を引き起こしかねない。その解決には、先ず地球文明がいかにあるべきかという明確な未来像が根底になければならない。そしてそのためには、相互影響し合いつつ刻々に変化する複雑なこの世界を、自然・世界(共同体)・人間の3層において正確に理解することが必要である。往時には一人の哲学者が担ったこの現状俯瞰と新しい世界構想の営為は、科学の加速度的進展と諸地域の急激な変化を伴う今日の世界においては、一人の研究者が遂行することが殆ど不可能となっている。それは人文・社会・自然の研究者の共同研究として、はじめて可能であろう。このような人文科学の新領域を「総合人間学」と呼びたい。本研究は、以上の認識のもとに、「総合人間学」―自然と社会(地域)に関する最先端の知を集約し、それら諸現象の人間的価値を諸文明の精神伝統に照合して再検討しつつ、新しい世界観・人間観・倫理観の確立を目指す「共同研究の場」―の創出を模索するものである。平成17年度研究計画(1)第2回総合人間学シンポジウム「人間を知り、未来社会を構想する」平成17年10月。外国からの招聘者4名・日本人講演者1名(2)研究会:2回(平成17年初夏、平成17年10月・ワークショップ終了後)なお、フランスのMaison des Sciences de l’Homme、アメリカのHarvard Round Table(Harvard大学)との共同研究を実施する。朝倉  尚池内  了池田 知久池本 幸生市川  裕石堂 常世逸身喜一郎内山 勝利大津  透丘山  新小川 正廣柿木 隆介笠井 清登桂  紹隆加藤 進昌河井 徳治黒田  彰行場 次朗小島  毅後藤 敏文塩月 亮子新宮 一成杉下 守弘杉本 良男関根 清三立木 康介恒川 恵市手島 勲矢長野 泰彦西川 昌弘納富 信留信原 幸弘林  信夫林 もも子原 洋之介日高 敏隆廣瀬 通孝広田 光一寶珠山 稔松尾 剛次丸山  徹三木 雅博村上 征勝守屋 彰夫矢野  環地球文明時代の世界理解と新しい倫理・人間観の研究(主査:中谷英明/所員10、共同研究員45)28アジア・アフリカ言語文化研究所かつては河であったと思われるとても細長い沼の渡し船。一番近い町からでも悪路を車で2時間の果ての村への入り口だ。(ミャンマー・バゴー管区,2005年1月,高島淳撮影)

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