本研究所は、アジア・アフリカの言語文化に関する総合的研究を目的とする大学間の共同利用研究所として1964年に設置され、これまでの40年間、国内外の共同研究や海外調査の組織化、研究資料の蓄積と公開、言語研修、辞典編纂などを通じて、この分野における主導的な役割を果たしてきました。現在、所員のそれぞれは、依然として研究の進んでいない部分の多いアジア・アフリカの諸言語や文化に関する研究を進めて知識の集積を図りつつ、こうした実証的な研究に基づいて新たな時代にふさわしい知的枠組みを形成することを目指しています。「グローバル化」という言葉に代表されるように、世界が今や一体のものであるという理解は定着したと言って良いでしょう。しかし、こうした一体性は世界各地の言語や文化が画一化することや、特定の文化的価値を奉じる集団が独占的な優位を占めることを意味するものではありません。現実の世界は多様性に富んでおり、また「地球化」にともなう異なる文化の接触によって、さまざまな地域で新たな文化が生成されてもいます。人類は種としての共通基盤の上に多様性に富む諸文化を生み出してきましたが、そうした生成の過程が激化していると言うこともできます。このような状況下で地球上の人類が共生を達成するためには、差異についての相互理解が不可欠であり、そのためには人類の社会生活の基礎を成す言語、文化に関する個別的な研究と普遍的な研究の双方からのアプローチが必要とされます。フィールドワークに基づく実証研究と、地域を基盤とした新たな知的枠組みの形成を目指す本研究所の役割は、ますますその重要性を増しつつあると考えます。本研究所は国立大学法人としての東京外国語大学に附置されておりますが、全国共同利用研究所としての機能を一層強化し、組織の枠を越えて国内外の研究者に広く開放された活動を展開することによって、学術研究の本来の姿である開かれた知の拠点を構築すべく努力する所存です。今後も研究者コミュニティおよび国内外社会のみなさまのご指導ご支援をお願い申し上げます。1東京外国語大学 要覧2005東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所所長 内堀基光所長あいさつ概 要
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