本研究では、海外中国人(本研究では、地政学的な「中国」の外に移住した中国系の人々を指す用語として用いる)を対象に、海外中国人を同質的、単一的に表象する従来の人文・社会科学の諸研究に共通した分析視点を批判的に再検討し、新たな海外中国人像(華人/チャイニーズ・クレオール等)や「民族」概念を再構築することを目的とする。具体的には、以下の諸点を明らかにする。(1)従来の諸研究において等閑視されてきた、周縁的存在となり土着化が進んだ中国系住民および多民族文化との混淆としてのチャイニーズ・クレオール等を中心とする多様な海外中国人に注目し、それらの人々が構成する様々な社会文化の実態、そしてそれらの人々のアイデンティティ形成過程を分析する。(2)ホスト社会と中国系住民との相互作用、国民国家化の過程、ローカル/グローバルの関係性から生じる、中国系住民が関わる民族カテゴリーとそのエスニック・ポリティックスの実態を把握する。歴史過程の中で中国系住民の土着化、クレオール化、或いは「中国人化(華人化)」という異なるベクトルが、必ずしも時系列的にではなく、時に同時並行的に進んで来たことや、土着化やクレオール化の道を歩んだ海外中国人のある一部分は、特定の政治的、経済的な要因によって中国人の範疇から捨象されたことを明らかにする。(3)土着化あるいはクレオール化した海外中国人という周縁性の排除によって、本質主義的な「華僑」「華人」像が想像されるプロセスを明らかにする。これまで2年間では、主に中国系住民を調査対象としてきたメンバーが、中国系移民の視点からホスト社会との関係、その中で構築される自画像についての分析をおこなった。来年度は、徐々に軸足をホスト社会の方に移し、ホスト社会から見た中国系住民の社会、中国系住民との接触、交渉過程、あるいは社会文化の融合、断絶などの様相などについての報告を行う予定。なお、本プロジェクトは、昨年度より開始された科研費基盤A「東南アジアにおける中国系住民の土着化・クレオール化についての人類学的研究」と連携し、現地調査を踏まえた研究を行っている。赤嶺 淳板垣 明美市川 哲甲斐 勝二紀 宝坤桑山 敬己貞好 康志末成 道男菅谷 成子芹澤 知広田村 和彦田村 克己中西 裕二信田 敏宏舛谷 鋭宮下 克也宮原 曉山本 須美子王 維1980年代にワープロが普及するにつれて、当時のワープロが実現していた基本的な禁則処理を含むいわば原稿用紙レベルでの組版が普及の兆しを見せ、活版印刷時代の高度な日本語組版は危機に瀕していた。この問題に対応するため、JIS X 4051日本語文書の行組版方法を1993年に制定し、1995年及び2004年に改正した。また、2000年にはJIS X 4052日本語文書の組版指定交換形式を制定した。欧米での組版は、シカゴ大学のChicago Manual of Styleやオックスフォード大学のStyle Manualなど、組版とともに、正書法も含めたスタイルマニュアルが確立しているが、日本語に関しては、このようなものは存在しない。こうしたことから、組版規則だけでなく、正書法も含めた日本語スタイルマニュアルを検討することが必要である。居郷 英司枝本順三郎小野沢賢三小林 敏逆井 克己田原 恭二野村 保惠平松 慎司日本語組版研究(主査:芝野耕司/所員1、共同研究員8)中国系移民の土着化/クレオール化/華人化についての人類学的研究(主査:三尾裕子/所員2、共同研究員19)25東京外国語大学 要覧2005
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