AA研要覧 2003
4/47

2 沿革 第二次世界大戦後,バンドン会議などを通じて,日本の将来にとって,アジア・アフリカ諸国との相互理解,相互協力を進めていくことの重要性が認識されるようになりました。そこで,1961(昭和36)年,日本学術会議はこれら諸国についての研究を進めるための共同利用研究所を設立するよう政府に勧告し,1964(昭和39)年に,アジア・アフリカ言語文化研究所がわが国では初めての人文科学・社会科学系の共同利用研究所として,東京外国語大学に附置されました。その具体的な設置目的は,次のようにまとめられます。 1)アジア・アフリカの諸言語の研究,およびそれらを通じて,アジア・アフリカ諸地域 の歴史・社会・文化を直接研究すること 2)それらの言語による資料の利用を容易にするための辞典をつくること 3)それらの言語の修得を助けるため,言語研修を実施すること 共同利用研究所としての本研究所は,全国のあるいは海外の研究機関に属する専門の研究者とともに共同研究を行い,これらの学者に設備や資料を提供することなどを通して,上記の設置目的を達成し,日本あるいは世界における人文・社会科学の研究の進展に寄与することを使命としてきました。 発足当初は,本研究所ではアジア・アフリカの個別の地域についての深い理解を目指し,言語学・歴史学・民族学などの視点から密度の濃い研究がなされました。しかし,設立以来30年以上を経過し,本研究所をとりまく諸事情は大きく変化しました。学界では,既存の学問体系に依拠した個別的な研究分野を乗り越えた新しい学問・理論構築への要請が高まってきました。それは,近年における国際化,地域の枠組みの流動化,民族・宗教問題の激化,都市化現象,経済のグローバル化などの急速な世界情勢の変化,及び狭い地域的枠組みにとらわれない広域な視野からの研究の必要性に対する認識の深まりなどと関連しています。他方,最近における情報処理技術の発達の中で,文字のみならず音声や画像の処理が可能になり,さらにこれらをひとつの情報ネットワークに統合化する研究が急速に進展してきています。 このような内外の情勢に対応し学問研究においてより先導的な役割を果たすために,本研究所は1991(平成3)年度に研究体制の抜本的見直しをおこない,従来の小部門制(及び1客員部門)から4大部門制(及び1客員部門)をとることとなりました。4大部門制では,言語を媒介として成立している文化を総合的に研究する体制を整え,また広域的なフィールドワークや共同研究を通して,幅広い研究者の英知を結集した研究,

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る