AA研要覧 2003
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28 中国系の土着化/クレオール化/華人化についての人類学的研究 (主査:三尾裕子/所員2,共同研究員13) ビルマ地誌フォーラム (主査:澤田英夫/所員2,共同研究員8) 本研究では,海外中国人(本研究では,地政学的な「中国」の外に移住した中国系の人々を指す用語として用いる)を対象に,海外中国人を同質的,卖一的に表象する従来の人文・社会科学の諸研究に共通した分析視点を批判的に再検討し,新たな海外中国人像(華人/チャイニーズ・クレオール等)や「民族」概念を再構築することを目的とする。具体的には,以下の諸点を明らかにする。 (1) 従来の諸研究において代表的な海外中国人として表象されてきた,ホスト社会の中で経済的・文化的ヘゲモニーを掌握した都市在住の「華人(所謂現地国籍を取得した中国人意識を持った人々)」だけではなく,マイノリティ,あるいは周縁的存在となり,現地化が進んだチャイニーズ・クレオール等を含む多様な海外中国人の社会文化の実態,そしてそれらの人々のアイデンティティ形成過程と現状。 (2) ホスト社会と海外中国人社会との相互作用及びそれによって生まれるアイデンティティの多様性(土着化/クレオール化/華人化)とその文化的特質の関係性。また,海外中国人社会との接触によるホスト社会の変容。 (3) ホスト社会と海外中国人との相互作用,国民国家化,ローカル/グローバルの関係性から生じる,海外中国人がかかわる民族カテゴリーとそのエスニック・ポリティックスの実態の把握。及びこれらから再構築される民族カテゴリーを事例として,文化人類学における民族論,クレオール概念について行う再考と新たな「民族」概念の提示。 板垣明美 市川 哲 甲斐勝二 桑山敬己 貞好康志 末成道雄 菅谷成子 芹澤知広 田村和彦 田村克己 中西裕二 舛谷 鋭 宮原 曉 第二次世界大戦前の刊行物以降,ビルマ(ミャンマー)の地誌・地名辞典は作成されていない。このことは,この国の独立以後現在に至るまでの地名や行政区分の変更,および,人文・社会科学諸分野の研究によって明らかにされた情報を盛り込んだ包括的な地誌の欠如を意味する。また,戦前の刊行物の地名表記の綴りはおおむね英語化されたものであり,正確なビルマ語表記も,モン語・シャン語など尐数民族言語由来の地名に関する情報も含んでいない。これまでのビルマ研究の成果を集大成しさらなる発展へとつなげていくために,上記2点の不備を補う新しい地誌データベースの構築はぜひとも必要である。 伊東利勝 伊野憲治 岩城高広 高谷紀夫 高橋昭雄 土佐桂子 渡辺佳成 Aye Chan

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