1 「グローバル化」という概念の浸透により,世界が一続きのものであるという理解が広がりつつあります。しかし,このことは必ずしも言語や文化が画一化することや,特定集団が支配的な地位を占めることを意味するものではありません。現実の世界は多様性に富んでおり,また各地域での異なる文化の接触は新たな文化を生み出しつつあります。多様性に富む諸集団が共生を目指すには,相互の理解が必要であり,そのためには人類の社会生活の基礎を成す言語,文化に関する個別的な研究と普遍的な研究の双方からのアプローチが必要とされます。 本研究所は,アジア・アフリカの言語文化に関する総合的研究を目的とする共同利用研究所として設置され,共同研究や海外調査の組織,研究資料の蓄積と公開,言語研修,辞典編纂などを通じて,この分野における主導的な役割を果たしてきました。その研究活動は,欧米に比して依然として知られざる部分の多いアジア・アフリカの諸言語や文化に関する研究を進めて知識の集積を図るのみならず,それらの研究に基づいて新たな研究の枠組みを提供することに向けられています。このために,所員による研究を進めるとともに,国内外の研究者の共同研究を組織してきました。 多様性に満ちたアジア・アフリカ地域に対する認識を広め,これらの地域との共存を進める上でも,本研究所の役割は,ますますその重要性を増しつつあると同時に,これらの地域を基盤とした新たな知的枠組みの形成に対する期待も増大しつつあります。 本研究所は2002年2月,北区西ヶ原から府中市に移転し,新たな環境での活動を開始しました。法人化という大きなうねりの中ですが,研究・運営体制を整え,法人の枠にとらわれることなく国内外の研究者に広く開かれた研究所として,一層の飛躍を目指す所存です。 東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所 所長 宮崎 恒二 所長あいさつ 概 要
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