26 言語基礎論の構築 (主査:峰岸真琴/所員4,共同研究員4) 土地・自然資源をめぐる認識・実践・表象過程(主査:河合香吏/所員6,共同研究員8) 本研究プロジェクトは,アジア・アフリカの諸社会において土地や自然資源をめぐって現在進行しつつある状況を,利用や所有にかんする形態や制度論にとどまることなく,生活のさまざまな文脈において生起する人びとの具体的な実践から,その生活世界を統合的に把握することによって解析するものである。 土地は,名づけられ,語られ,歴史を付与されたものであるとともに,生活実践の場として,そこに身をおき,身体をもって働きかける,あるいは見,聞き,ふれることによって身体において「知る」対象であるといった意味において,身体性とも深くかかわる。こうした土地,およびこれに付随する自然資源は,外在的な認識の対象にとどまらず,人びとにとって「生きられる世界の全体」としてあつかいうる。このような視点を採用することによって,土地や自然資源をめぐる認識・実践・表象という問題系を,実用主義と主知主義,実体論と象徴論の二項対立的な図式をこえて,身体,記憶,歴史,他者といった要素を取りこみながら「生」の全体を包括した文化・社会理論を構築するための方法論と解析手法として提示することが可能となる。 本プロジェクトでは,土地・自然資源の利用や領有の実態,および認識と表象過程についておのおのの社会のおかれた状況をふまえて比較検討する。さらに,土地や自然資源をめぐる人びとの多彩な実践を,具体的な「生」の現場としての土地をめぐる自然観・環境認識の問題系としてあつかい,民族の歴史や集団間関係,国家政策との関係をもふくめた「生」の現場から再考察することを目指す。 プロジェクト2年目となる今年度は,1年目の討論,成果をふまえ,言語文化と自然ないし生態とを結び付けうる統合的な議論の場をめざす。あらたな視点と方法論を模索,開拓しつつ,その可能性を議論してゆきたい。 梅崎昌裕 北村光二 小松かおり 椎野若菜 杉山祐子 津村宏臣 寺嶋秀明 吉村郊子 現代の言語理論は,西欧諸語の研究に深く根ざしたものを中心に展開されてきた。西欧語型の言語理論の枞組みが多くの非ヨーロッパ的言語の理論的考察に広く適用されていく中で,言語構造のタイプの違いからくる分析上の問題点は多く指摘されてきたが,これまでは,結局,従来理論の完成度の問題として対処され,西欧語型理論が基礎をおく前提概念,カテゴリーに対して具体的な反省が及ぶことはなかった。また,記述言語学者の側も,個々の言語記述において,そのような伝統的前提概念やカテゴリーを,十分に反省を加えることなく,基本的枞組みとして踏襲することが決して尐なくなく,その結果,それぞれの言語の特徴に即した記述であるべきものが,はからずも「西欧語から見た記述」になってしまっていることも多い。 本プロジェクトでは,従来の言語理論,言語記述のあり方を問い直し,言語研究の新しい展開のための基盤を作ることを目的とする。そのために,現行および過去の言語理論について,その基礎概念,カテゴリーを再検討し,通言語的視野に立った枞組みの可能性を検討する。 加藤重広 佐久間淳一 町田 健 籾山洋介
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