20 東アジアの社会変容と国際環境 (主査:中見立夫/所員3,共同研究員33) 旅と表象の比較研究(第2期) (主査:高知尾 仁/所員5,共同研究員12) この研究は,他者との出会いを提示し,他者の言表と他者世界が表象するものを解釈し,他者文化の持つ多様な意味を構成する旅のディスクールを主要な対象とする。その際,他者言説を生むコンテクストや,他者の自己(自己文化)との距離・差異の構築や,他者表象が持つ価値評価などが問題となると思われる。他者が直接的に語られるという前提への疑問と,他者表象のバイアスと他者についてのディスクールそれ自体が充分に見つめられなかったことへの反省として,近年欧米で飛躍的に研究が進められている旅行記研究に対応して,ここでは,近代ヨーロッパ(ルネサンス以降)の旅のテクストとそのほかの文化の旅のテクストを取り上げるとともに,他者についての多種多様な表象形態や,それに関連した諸理念(例えば,秩序,正義,正統,コスモス)の表象化についても研究の対象とする。従って,この研究では,旅論・表象論・他者論とそれらの交差する領域が取り扱われることとなる。このような比較研究によって,エクリチュールを有する文化による,他者と他者のいる場所と時間の配置・配列が明らかにされ,またその文化と他者との関係性(例えば,理想,調和,幻想,混乱,絶望,排除)を提示するディスクールが明らかにされるものと期待される。またさらには,他者に対比された自己(自己文化)のアイデンティティの提示の実体や,文化の普遍性や近代というディスクールについても考察されることが期待される。 第1期の研究に継続して,第2期では,「旅の研究」を「人文主義・人文科学における現地(field)主義の系譜学の研究」へと展開し,「他者表象の研究」を「世界表象のモーメントとしての両(東西)インド表象の研究」へと展開する予定である。 浅井雅志 荒木正純 彌永信美 齋藤 晃 重松伸司 田中純男 谷口智子 難波美和子 西尾哲夫 原 毅彦 原田健一 渡辺公三 近年における国際情勢の変化と学術交流の発展によって,われわれ歴史学研究者は東アジア各地域の文書館・図書館などに所蔵される一次資料に対し,以前とは比べられないほど容易に接近できるようになった。さらに,現地学界でも,あらたな歴史評価・研究動向がおこり,われわれの研究への刺激となっている。ただ対象とすべき史料の量があまりに膨大で,その実態を体系的に把握してはいない。 また,個別の研究が深化するとともに,より大きな視野のもとに,問題をとらえなおし,分析枞組みを再検討することも必要である。さらに海外学界との共同研究,史料調査も,双方にとって,より具体的で実りの多い形で推進しなければならない。 本プロジェクトでは,このような研究状況を念頭におきながら,18世紀から20世紀初頭の東アジア世界各地域における社会の変容が,外部世界とどのように有機的に連関していたかという問題を中心にすえ,文書史料によりそれがどこまであきらかにできるか検討する。東アジアに関する史料と研究情報の開かれたフォーラムをめざしている。 毎回テーマをかえながら,海外からのゲスト・スピーカーもまじえ,シンポジウム形式で研究会を開催し,また『東アジア史資料叢刊』などの出版物も刊行している。 赤嶺 守 石井 明 石濱裕美子 井上 治 井村哲郎 江夏由樹 岡 洋樹 尾形洋一 小野和子 岡本隆司 笠原十九司 加藤直人 貴志俊彦 岸本美緒 楠木賢道 佐々木揚 新免 康 菅原 純 坪井善明 寺山恭輔 中村 義 西村成雄 萩原 守 浜下武志 原 暉之 藤井昇三 細谷良夫 松重充浩 毛里和子 森川哲雄 森山茂徳 柳澤 明 吉澤誠一郎 一般共同研究プロジェクト
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