フィールドプラス no.2
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3232Field+ 2009 07 no.2赤嶺 淳(あかみね じゅん)1967年生/名古屋市立大学、元AA研共同研究員/東南アジア地域研究主要著作:『地球環境主義下に生きる:ナマコをめぐるエコ・ポリティクス』(新泉社、近刊)●ひとこと:ワシントン条約に代表されるような、生態系や文化的背景の多様性を無視した資源管理のあり方に疑問を感じつつも、では、どうやれば生態資源の持続的利用が達しうるのか、悩んでいます。石川博樹(いしかわ ひろき)1973年生/AA研/歴史学、アフリカ史主要著作:『ソロモン朝エチオピア王国の興亡―オロモ進出後の王国史の再検討―』(山川出版社、近刊)●ひとこと:これまで行ってきたエチオピア史の研究を続けつつ、今後はサブサハラ・アフリカ史全般に関わるテーマやフィールドワークと文献研究を融合させたテーマにも取り組もうと考えています。市川 哲(いちかわ てつ)1971年生/AA研ジュニアフェロー、立教大学観光学部プログラム・コーディネーター/文化人類学、トランスナショナリズム研究主要著作:「サブ・エスニシティ研究にみる華人社会の共通性と多様性の把握」(『華僑華人研究』第4号、69-80頁、2007年)●ひとこと:華人研究を華人社会内部のみで完結させず、他の民族との婚姻やキリスト教への改宗、第三国への再移住、食文化や生活様式に見られるローカルな要素の影響等に注目することにより、様々な角度から進めて行きたいと考えています。片岡 樹(かたおか たつき)1967年生/京都大学大学院、AA研共同研究員/文化人類学、東南アジア地域研究主要著作:『タイ山地一神教徒の民族誌―キリスト教徒ラフの国家・民族・文化―』(風響社、2007年)●ひとこと:タイのいちばん南といちばん北をフィールドに、中国出身者たちの宗教実践や民族意識について考察することを通じ、そもそも東南アジアとは何かという問題を周縁の視点から考えていきたいと思っています。上岡弘二(かみおか こうじ)1938年生/AA研元所員/イラン諸語,シーア派の民間信仰主要著作:『アジア読本イラン』(河出書房新社,1999年)●ひとこと:多病息災のanticlimax年代。なおいささかのserendipityにも期待しつつ,seniorityの伝統の残る地域に出かけては,思いがけないsynchronicityをも感じながら,この年齢ならではの心地よい時を享受しています。小松かおり(こまつ かおり)1966年生/静岡大学、AA研共同研究員/生態人類学、アフリカ、沖縄、バナナ研究主要著作:『沖縄の市場〈マチグヮー〉文化誌』(ボーダーインク、2007年) ●ひとこと:これまでは、ひとつひとつのモノや出来事に興味を持っていましたが、これからは、研究を通して知ったことや知り合った人を結んで、考えを深めたり、新しいことを生み出せたらいいな、と思っています。貞好康志(さだよし やすし)1964年生/神戸大学大学院、元AA研共同研究員/インドネシア地域研究主要著作:「生きのびる混血性―ジャワのプラナカン華人」(『歴史評論』第644号、48-63頁、2003年)●ひとこと:インドネシアに魅せられて20年。この国の政治に表れた同化主義と多元主義、日常レベルでの社会実態や人々の心情をなんとか関連づけて把握しようとチャレンジしています。佐藤万里江(さとう まりえ)1980年生/東京大学大学院総合文化研究科博士課程/アメリカ研究主要著作:「ハワイのオキナワ料理の創造:女性団体出版のクックブックにみる文化変容」(白水繁彦編『移動する人びと、変容する文化:グローバリゼーションとアイデンティティ』御茶の水書房、49-71頁、2008年)●ひとこと:フィールドで作っていただいた料理に関するさまざまな情報が伝わる写真、映像そして文章の技術を磨くことが今後の課題のひとつです。佐藤靖明(さとう やすあき)1976年生/大阪産業大学、AA研Fieldnetウェブ構築委員/民族植物学、アフリカ地域研究主要著作:「人とバナナが織りなす生活世界―ウガンダ中部ブガンダ地域におけるバナナの栽培と利用」(『ビオストーリー』第2号、106-121頁、2004年)●ひとこと:人と植物の関係を調べる民族植物学の一環として、ウガンダのバナナにかんする食文化や農業を研究してきました。最近では、これまで明らかにしたことが隣国のルワンダやコンゴでどこまで適用できるかに興味を持っています。また、ウガンダのバナナを使った料理は日本人にも比較的受け入れやすい味や食感を持つこともあって、二国間で食文化の越境や融合ができないかと夢想しています。末成道男(すえなり みちお)1938年生/東洋文庫研究員、元AA研共同研究員/社会人類学主要著作:『ベトナムの祖先祭祀:潮曲の社会生活』(風響社、1998年)●ひとこと:現在のように変化が激しく、グローバル化の波が押し寄せている状況で、人類学の独占的領域は過去のものになってしまった。もし独自の貢献があるとしたら、他の専門分野との相互交流だけでなく、腰をすえた直接観察から生まれると思う。菅谷成子(すがや なりこ)愛媛大学、元AA研共同研究員/フィリピン近世史主要著作:「スペイン領フィリピンにおける「中国人」―“Sangley”, “Mestizo”および“Indio”のあいだ―」(『東南アジア研究』第43巻第4号、374-396頁、2006年)●ひとこと:スペイン領マニラに生きた人びとの日常を解明しつつ、東南アジア史におけるフィリピンを考えたいと思います。 芹澤知広(せりざわ さとひろ)1966年生/奈良大学、元AA研共同研究員/文化人類学主要著作:『日本人の中国民具収集—歴史的背景と今日的意義』(共編著、風響社、2008年)●ひとこと:社会の変化が激しくて、100年前、50年前の人々の暮らしや考えかたを想像しにくくなってきています。戦前・戦中に日本人が書いた本を読んだり、ベトナム戦争の時代について聞いたりする時に強く感じます。高松洋一(たかまつ よういち)1964年生/AA研/オスマン朝史、古文書学、アーカイブズ学主要著作:“Formation and Custody of the Ottoman Archives During the Pre-Tanzimat Period.” Memoirs of the Research Department of the Toyo Bunko, 64, pp.125-148, 2006.●ひとこと:昨年12月にAA研で行ったオスマン文書セミナーにはおかげさまで40名近い参加者がありました。私が勉強を始めた頃と比べると、日本の研究水準の向上は隔世の感があります。セミナーは今年も企画しています。長崎 郁(ながさき いく)1968年生/AA研特任研究員/言語学、ユカギール語主要著作:『コリマ・ユカギール語例文付き語彙集』(共編,大阪学院大学情報学部,2004年)●ひとこと:コリマ・ユカギール語の調査を始めて10年以上経ちました。昨年度は大きな仕事もまとめ,少し区切りがついた気持ちです。次はどんな風に研究を進めていくべきか,しばらく考えて新たな一歩を踏み出したいと思っています。中西裕二(なかにし ゆうじ)1961年生/立教大学、元AA研共同研究員/文化人類学、民俗学主要著作:『憑依と呪いのエスノグラフィー』(梅屋潔・浦野茂・中西裕二著、岩田書院、2001年)●ひとこと:宗教を中心とした民俗文化研究を中心に、日本とベトナムでフィールドワークに基づく研究を進めています。とくにベトナムでは、本頭公をはじめとした周縁的存在から、民族カテゴリーのあり方について研究を続けています。三尾裕子(みお ゆうこ)1960年生/AA研/文化人類学主要著作:「中国系移民の僑居化と土着化―ベトナム ホイアンの事例から」(伊藤亞人先生退職記念論文集編集委員会編『東アジアからの人類学 国家・開発・市民』風響社、85-102頁、2006年)●ひとこと:「世の中を少しでも住み良くしてくれるのは、『自分は間違っているかもしれない』と考えることのできる知性」(内田樹)です。人類学は「独りよがりの正しさ」に私を導かない他者との出会いの場を与えてくれます。渡辺 己(わたなべ おのれ)1965年生/AA研/セイリッシュ語主要著作:A Morphological Description of Sliammon, Mainland Comox Salish, with a Sketch of Syntax. Endangered Languages of the Pacific Rim Publication Series A2-040. (Osaka: Osaka Gakuin University, 2003)●ひとこと:拙文に登場してもらったメアリーさんは今年1月に亡くなられました。これからは彼女に教えてもらったスライアモン語を、彼女の笑顔が感じられるような文法書にまとめていくことが仕事だと思っています。PROFILE

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