フィールドプラス no.2
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3030Field+ 2009 07 no.2長年、イランの言語研究とシーア派イスラームの民間信仰調査にとりくんでこられた上岡さん。現在もご自身のフィールドであるイランをはじめパキスタン、ブルガリア、トルコなどに足を運び、イスラーム圏でも女性の美しい写真をとって来られる。その秘訣をご紹介いただこう。 写真は、人物に始まり人物に終わる。撮りやすくて、撮りにくい。一期一会のフィールドで、それなりの写真を撮るためのノウハウを、下手の横好き体験から記してみる。 人を撮るのとモノを撮るのとは、同じでない。人の場合には、撮る者と撮られる者の関係性が問題になる。撮ることによって関係性を結ぶこともできる。即背面モニターで画像を共に見ることができるデジカメは、まさにしかり、関係性を結ぶ最高の小道具。活用しない手はない。●間合い まず、被写体との間合いの取り方。2〜3枚しか撮らないのならば、「3歩前へ!」。これまでより3歩間合いを詰める。素人は、相手にかかわらず、ほぼ3mの間合いで撮る。これでは間が空きすぎ。3歩前へ出て撮るためには、被写体とのそれなりの関係性が要求される。「3歩前へ !」 で格段に腕が上がる。人を撮るなら、騙されたと思って、これだけはやってほしい。 イスラーム圏では、男性が成人女性を撮るのは容易でない。奥義があれば筆者が教えてほしいところであるが、それでももちろん女性を撮っている。まず子どもから始める。子どもを撮って文句を付ける人はいない。バシャバシャ撮る。ついで男性をきっちりと撮る。時間をかけて男性を撮ることが、次へのステップになる。その後で子どもと女性。そして、やおら女性のみを。この手でいつも成功している。イスラーム圏のだれもが写真大好き。いったん男性が黙認する雰囲気になれば、女性も、晴れ着に着替えたりして、われ勝ちに被写体になってくれる。クルド人(イラン)チャイハネの窓からの自然光をレンブラントライト(レンブラントが多用した上方、やや後方よりの斜光線)として利用。左目にも少し光が来ていることに注意。イスラーム教徒の少女(ブルガリア)視線の向く左手を空けている。老人のときは、逆に反対側を空けて、歳月の経過を暗示することができる。ピントは必ず手前の目に合わすこと。Field+PHOTOGRAPHYフィールドで人を撮る上岡弘二 かみおか こうじ/AA研元所員

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